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平山夢明「溶解人間」

あらすじ…小林少年とポケット小僧が夜道を歩いていると、悲鳴が聞こえる。二人が駆け付けると、そこには溶解人間が!

「どうせまた二十面相だろ」
 と思って読むとひどい目に遭います。そもそも著者の平山夢明はホラー小説を得意としており、ネタバレ防止のために詳しくは明かせませんが、この作品でもそれが活かされていてホラー&スプラッター要素の強いものとなっています。ぶっちゃけ、グロ注意です。

【参考文献】
有栖川有栖・歌野晶午・大崎梢・坂本司・平山夢明『みんなの少年探偵団2』ポプラ社

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坂本司「うつろう宝石」

あらすじ…小林少年がチンピラ別働隊の副隊長・のっぽの松ちゃんと会い、『紅の涙』盗難事件などについて話し合う。

 あらすじの段で述べた『紅の涙』とは社長令嬢の首飾りに使われている宝石で、二十面相がその首飾りを盗んだとされているものの、小林少年は「二十面相のしわざじゃない」(P159)と推理しています。
 推理の根拠は伏せておきますが、二十面相の行動原理を把握していればわかることだし、被害者であるはずの社長の対応にも不審な点が見受けられます。この2つの事実が指し示しているのは…!? ともあれ、社長の周辺を洗ってみる必要がありそうですな。

【参考文献】
有栖川有栖・歌野晶午・大崎梢・坂本司・平山夢明『みんなの少年探偵団2』ポプラ社

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大崎梢「闇からの予告状」

あらすじ…主人公は中学2年生の小雪。彼女の祖母のもとに、怪人に二十面相から犯行予告が届く。ロマノフ王家の宝玉をいただくという。

 小雪ちゃんの名字が伏せられているのに気付きました。その名字が明らかになるのは後半になってからです。

 それはさておき、この物語の舞台は、二十面相が活躍した「戦前戦後」は「さっと七十年前」(P104)とされていることから、2010年代あたりでしょうか。もちろん昔の二十面相が盗みに来るとは考えがたい。
 一方、祖母によると明智小五郎は既に死んでいて、その息子がロンドンにいるとのこと(P115)。息子がいたの!? まあ、シャーロック・ホームズにだって二次創作の世界では息子がいたりするから、原作には登場しない子孫が出てきてもおかしくはないか。

【参考文献】
有栖川有栖・歌野晶午・大崎梢・坂本司・平山夢明『みんなの少年探偵団2』ポプラ社

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ブライアン・フリーマントル『シャーロック・ホームズの息子(上)』新潮社
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歌野晶午「五十年後の物語」

あらすじ…五十年前を回想する。五十年前、少年探偵団にかぶれていた少年たちは、ある怪事件に遭遇する。

 五十年前の事件とは何かというと、「七代目小林芳雄のこと」(P58)だそうです。うわあ、こいつはうさん臭いぞ。
 更に読み進めてみると、七代目小林芳雄と名乗る人物(大人)が岡田俊介少年に声をかけ、八代目小林芳雄にならないか…って、妖しさ満点ですな。

【参考文献】
有栖川有栖・歌野晶午・大崎梢・坂本司・平山夢明『みんなの少年探偵団2』ポプラ社

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有栖川有栖「未来人F」

あらすじ…二十面相が再び脱獄する。そして、「未来人F」と名乗る怪人物が国立博物館のお宝を盗み出すと犯行予告する。

 未来人F…?
「なんだ、また二十面相か」
 と思いましたが、今回は一ひねり入れてきました。ネタバレ防止のために詳細は伏せますが、こういった工夫はマンネリ打破のために必要なのでしょう。
 ただ、後半のメタ発言の連発については…まあ、二次創作だからこのくらいは許されるのかもしれません。

【参考文献】
有栖川有栖・歌野晶午・大崎梢・坂本司・平山夢明『みんなの少年探偵団2』ポプラ社

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『超・怖い話ガム 復刻の書 その二十七「底なし沼」』トップ製菓株式会社

あらすじ…「ぼく」とカズヤくんが池でフナ釣りをしていると、おじいさんがやってきて警告する。

 おじいさんの警告を引用します。

「ここは底なし沼で危ないから帰りなさい。前に子供がおぼれて釣り禁止になってる。暗くなると河童がでるよ」

 ここで禁忌の設定がなされるのですが、もちろん主人公たちは言うことを聞かずに釣りを続け、このテの怪談として定石通りに怪異に遭遇します。それではどんな怪異かというと、おじいさんの言葉を読んで察すべし。

 さて、ここから先は結末部分を含むネタバレをします。この後、カズヤくんが河童らしきものに池に引き込まれて水死体となって浮かぶのですが、そもそもこの話は主人公視点で語られているのみならず、カズヤくん殺害の目撃証言は主人公しかありません。つまりもしも主人公が嘘をついているとしたら…?
 そしてもう一つ。文章をよく読むと、主人公はカズヤくんのことを友達だとは一言も述べていないのです。一緒に釣りに行く仲なんだから友達だろうと読者が(勝手に)判断しているだけです。カズヤくんは主人公のことを友達だと思っているけど、実は主人公はカズヤくんのことを友達だとは思っていないのかもしれません。
 以上のことから愚考するに、主人公がカズヤくんを殺して河童の犯行に見せかけたという可能性が微粒子レベルで存在する。まあ、もしそうならば、それはそれでホラーであるんですけどね。

超・怖い話ガム 復刻の書 その二十七「底なし沼」

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『超・怖い話ガム 第9弾 超・怖い話 その百五十「お土産」』トップ製菓株式会社

石川淳「マルスの歌」

 ストーリーを簡潔に記すと以下の通り。
(1)小説が書けずに苦しむ。
(2)従妹の帯子がやってきて、姉(冬子)が死んだと言う。
(3)冬子の葬儀。
(4)伊豆の長岡へ旅行
 そしてストーリー全体を通して、「マルスの歌」とそれに伴う狂躁が通底しています。

 ところで、本書によるとこの短篇小説は1938年の作品です。即ち、前年の1937年には支邦事変が起こり、翌年の1939年には第二次世界大戦が勃発するという時代なのです。
 戦争の神マルスにしてみれば、いよいよこれから大ハリキリだぞといったところでしょうか。そしてこの作家(石川淳)はその神の心を敏感に嗅ぎ取っているのかもしれません。

【参考文献】
池内紀・川本三郎・松田哲夫=編『日本文学100年の名作 第3巻 三月の第四日曜』新潮社

尾崎一雄「玄関風呂」

あらすじ…風呂桶を買ったはいいが置き場所がない。そこで玄関に置いて風呂に入ることにした。

 ユーモラスな作品。肩の力を抜いて読むべし。
 それにしても玄関に風呂桶なんか置いたら、水しぶきで靴が濡れちゃうかもしれませんな。…え? 大変なのはそこじゃない?

【参考文献】
池内紀・川本三郎・松田哲夫=編『日本文学100年の名作 第3巻 三月の第四日曜』新潮社

菊池寛「仇討禁止令」

あらすじ…高松藩士・天野新一郎は同志と共に婚約者・八重の父親で佐幕派の成田頼母を暗殺する。後に天野は明治政府に出仕して東京に住むが、そこへ八重とその弟・万之助がやってくる。万之助は父の仇を討とうとしていた。

「仇討禁止令」人物関係図

 ここで注意すべきなのは、成田頼母暗殺の実行犯の中に天野新一郎が入っているということを、万之助も八重も全く気付いていないということです。
 他の実行犯の中にはその後も生き残った者もいたし、計画を練っていた時に他にも同志はいたようだから、新一郎が犯行に加担していることを知っている人間は存外に多い。しかし彼らの口は堅かったようで、その秘密が万之助に漏れることはなかったものと推測いたします。
 それにしても、新一郎のドキドキ感がしんどい。これほどの秘密を抱えて生きるのがこんなにも辛いとは…。おそらく、この心の重荷が彼の寿命を相当削ったんじゃないでしょうか。

【参考文献】
池内紀・川本三郎・松田哲夫=編『日本文学100年の名作 第3巻 三月の第四日曜』新潮社

池波正太郎「獅子の眠り」

あらすじ…老中・酒井忠清は信州松代藩の跡目相続に介入しようとするものの、隠居していた真田信之に密書を奪われ、介入に失敗。忠清は密書を奪い返そうと焦る。一方、死を間近に控えた信之のもとには凶報が入る。近習の伊木彦六が藩の横目付の守屋甚太夫を殺したというのだ。

 作品の冒頭で語られる跡目相続の補助資料として、真田家の家系図をとりあえず掲載しておきます。尚、真田信之は信幸とも表記しますが、この作品の中では信之と表記してあるのでこれに従いました。

真田家の家系図

 さて、タイトルの「獅子の眠り」の獅子とは本作の主人公・信之のことで、この時93歳。長生きしてるなあ。「冬のライオン」より老いています。
 それにしても、93歳の老人を騒動に巻き込むとは、作者(池波正太郎)もなかなか酷なことをしますな。いや、あるいは、信之ほどの「人気者」ともなれば93歳になっても放ってはおかれない、と見るべきか。

【参考文献】
池波正太郎『黒幕』新潮社

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