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五味康祐「喪神」

あらすじ…妖剣の使い手といわれる瀬名波幻雲斎が多武峰に隠棲する。とそこへ、松前哲郎太が父の仇を討たんとやってくる。だが、哲郎太は敗れ、幻雲斎親子と同居生活を送るようになる。

「喪神」人物関係図

 前半の主人公は瀬名波幻雲斎、後半の主人公は松前哲郎太という構成です。両者は親子ほど齢が違う、というより上掲の図を見ればわかるが、哲郎太は幻雲斎の娘とデキちゃうので事実上の義理の親子といってさしつかえあるまい。

 それはさておき、幻雲斎が使う剣は夢想剣というものだそうですが、作品中で幻雲斎が語るところを自分なりにまとめると、自分さえも意識せずに本能的な防禦で敵を斬るというものらしい。
 だとすると、夢想剣は敵に攻めかかる際にはちょっと使えそうにないようですな。

【参考文献】
『芥川賞全集 第五巻』文藝春秋

石田衣良「いれない」

あらすじ…遠藤直哉は弥生と「特殊な関係」を持つ。それは、挿入以外のいやらしいことをするというものだった。

 タイトルの「いれない」は男根を挿入しないということ。たしかに挿入以外にもエロいことは色々あるわけで…。
 ところで、ちょっと気になったのが、エロシーンで遠藤直哉が射精したという記述がないことです。挿入しなくても射精する時は射精するものだが…ひょっとして、射精の描写を省略しちゃったのかな? あるいは、そこまで行かなかったのか。

【参考文献】
『エロスの記憶』文藝春秋

野坂昭如「エレクションテスト」

あらすじ…問題山積で行き詰った日本。ある時、首相がとんでもない制度の導入をぶち上げる。それは、65歳以上の男性に勃起能力があるかどうかをテストするというものだった。

 このエレクションテストに合格すると今まで通りの年金や恩典を受給でき、不合格となるとドラッグ給付などがなされるというもの。で、不合格者は酒やギャンブル、クスリに溺れて死んで行くといった次第。
 まあ、馬鹿馬鹿しい話ですので、現実にこんな提案をしたら無視されるか笑われるか袋叩きに遭うかして実現なんかするはずがない。だが、この作品ではそうはならない。コメディの世界だから実現に向けて進んじゃうんです。
 というわけで、この作品はしょうもない馬鹿話として読むのがいいんじゃないでしょうか(適当)。

【参考文献】
『エロスの記憶』文藝春秋

林真理子「本朝金瓶梅」

あらすじ…金持ちのプレイボーイ・西門屋慶左衛門は美女を探し求めていた。そんなある時、ようじ屋の女房・おきんに目をつけ…。

 中国のエロ小説『金瓶梅』が元ネタ。私は原作は未読ですが、西門慶→西門屋慶左衛門というのはさすがにわかりました。とするとおきんの元ネタは金蓮かな?
 それはさておき、本作では慶左衛門とおきんの濡れ場が描写されます。でも、そこで

「アレ、アレ、いきますヨー」(P152)

 なんて喘ぎ声を上げられては苦笑するしかない。

【参考文献】
『エロスの記憶』文藝春秋

小池真理子「千年萬年」

あらすじ…鎌田美津代(52)は岩井指圧院でマッサージを受け、快感を得る。それ以後、彼女はそこに通うようになり…。

 ネタバレ防止のために詳細は伏せますが、そこで終わるのかよというところで話が終わります。しかしそれによって、緊張感が余韻として残りました。
 もしも作者が岩井志麻子だったら、早い段階で岩井氏との性交を描くことでしょうなあ。

【参考文献】
『エロスの記憶』文藝春秋

『ひかり、あかり。』

文・小宮由美子
絵・西淑
備考:ヨコハマ夜景特別付録ミニ絵本

あらすじ…「くつしたねこ」と「しまねこ」が、「まちがキラキラしてる」ので出かけることにした。

 なぜ「まちがキラキラしてる」のかというと、クリスマスだから。たしかにクリスマスになるとクリスマス用の飾り付けがあふれるし、イルミネーションとかもありますからね。
 で、ネコたちは出かけて何をするのかというとただ見て回るだけ。クリスマスプレゼントを買うとかクリスマスパーティーを開催するといったようなことはしません。お金がなかったのでしょうか。それとも、そもそもネコは人間の経済活動をしないのかもしれません。

『ひかり、あかり。』

【参考文献】
『mirea 別冊 ヨコハマ夜景』cubic(株)

mirea 別冊 ヨコハマ夜景

藤野千夜「夏の約束」

 マルオとヒマルのゲイカップルとその友人たちの日常を描いた群像劇。日常系のゆるい感じで話が進むので、比較的気楽に読み進めることができました。もっとも、LGBTの問題などが各所に潜んでいるので、それらについて考えだしたらキリがなくなりそうではある。
 ちなみにタイトルの「夏の約束」とは八月にみんなでキャンプをしようというもの。深刻な話ではないので、読み進めるうちにマルオのように忘れてしまうかもしれません。
 それはさておき、解説(らしきもの)を一つ。

「やっとクローゼットから出てきたんだね」(P296)

 英語で隠れホモをクローゼット・クイーン(closet queen)といい、クローゼットから出るというのはゲイをカミングアウトすることです。上記のセリフはヒカルがマルオに言ったものですが、マルオはカミングアウトしたというよりも「社内でゲイだと知られた」(P296)、つまりはホモバレであり、寧ろクローゼットから追い出されたという次第。

【参考文献】
『芥川賞全集 第十八巻』文藝春秋

花村萬月「ゲルマニウムの夜」

あらすじ…カトリック修道院の付属農場にいる青年が、夜、ゲルマニウムラジオを聴きながら、犬を蹴り飛ばし、農場をぶらつく。そして、修道女見習いの女性と…。

 農場をぶらつく間に色々な回想が入るのですが、その中の一つに主人公の青年が神父を手コキした話が出てきます。神父は青年をかくまう代わりに手コキをさせたとのことですが、「そんな事情があるのならば手コキだけじゃ済まないだろ」と思ってしまうのは私がエロい話を色々と読んできたからかもしれません。

 それはさておき、ここから先はクライマックスのネタバレをします。
 クライマックスで青年は修道女見習いの女性とセックスするのですが、そのくだりの描写が凄い。濡れ場では文章の改行が一切なく、しかも主人公は性交中に意識が飛びながらも思考がグルグル回っていて、性行為と思考が交互に描かれます。怒涛の勢いとはこのことか。

【参考文献】
『芥川賞全集 第十八巻』文藝春秋

目取間俊「水滴」

あらすじ…沖縄の老人・徳正(とくしょう)の右足が突然膨れ上がり、徳正は寝たきりになってしまう。更に右足の親指の先から水滴が落ち始める。

 面白くなってくるのは、旧日本軍の兵士たち(もちろん亡霊)がやってきて徳正の水滴を飲むくだりになってからだな。そう思ったのは私に怪奇趣味があるからか。
 それはともかく、物語が進むにつれて徳正の封印されていた過去が次第に明らかになります。ネタバレ防止のために詳細は伏せますが、主人公は晩年になって過去と向き合わなければならなくなったのだと見ることができます。

【参考文献】
『芥川賞全集 第十八巻』文藝春秋

野村行央『ロスト・グレイの静かな夜明け』集英社

あらすじ…不慮の事故に巻き込まれて亡くなった15歳の少女・アズサは、見知らぬ場所で目を覚ました。傍らにはカーゴと名乗る少年。そこは、心残りを抱えて亡くなった者がたどり着く“霧の壁”の向こうだという。知る人もいない世界で、再び“生きる”ことになったアズサ。しかし、そこは武器商人が権力を握る退廃的な町で?(裏表紙の紹介文より引用)

『ロスト・グレイの静かな夜明け』人物関係図

 ラノベの世界では「まれによくある」とされる異世界転生。本作でも主人公が異世界転生をするのですが、プロローグでアズサの両親が死んだアズサを“霧の壁”の向こう側へ送り出すくだりが出てくることから、異世界は異世界でも元の世界で少しは知られている世界ではある。

 さて、本作の主人公アズサは実に幸運と言わねばなりますまい。異世界転生をした初日に住むところを確保し、翌日にはウェイトレスの仕事を得たのですから。おそらくは主人公補正が入っているのでしょう。
 とはいえ、彼女は平凡な少女であり、戦闘が得意なわけでもなければ魔法が使えるわけでもなく、ましてやチートレベルの特殊スキルを所持しているわけでもない。
 となると、彼女ができることとなると限られてくるわけで、この後の展開でも…まあ、彼女は彼女なりに頑張っているんですけどね。

【参考文献】
野村行央『ロスト・グレイの静かな夜明け』集英社

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