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池井戸潤「ローンカウンター」

あらすじ…連続婦女暴行殺人事件が起き、山北史朗刑事は捜査するが犯人の手掛かりは掴めなかった。そんな中、山北は銀行へローンを借りに行くことに。

 巻末の解説(P313-321)によると、ここで山北が出会う銀行員・伊木遥は長編作品『果つる底なき』の主人公とのこと。私は『果つる底なき』は未読ですが、「ローンカウンター」は一つの独立した作品なので、一読者として楽しむ分には未読でも問題あるまい。
 寧ろ、ここで伊木遥という銀行員の素人探偵に興味がわいたら、『果つる底なき』をどうぞ、といったところでしょうか。

【参考文献】
池井戸潤『銀行狐』講談社

池井戸潤「銀行狐」

あらすじ…狐と署名された脅迫状が、帝都銀行頭取宛に届けられた。「あほどもへ てんちゅー くだす」。具体的な要求はないが、顧客情報漏洩、系列生保社員の襲撃と犯行はエスカレートする。狐の真意と正体は?(裏表紙の紹介文より引用)

【主要登場人物一覧】
指宿修平―――帝都銀行特命担当。本作の主人公。
鏑木和馬―――指宿の補佐。
戸崎宣之―――総務部長。
門倉澄男―――警視庁の刑事。
斎藤一志―――副頭取。リスク管理委員会委員長。
神谷喬一―――新橋支店長。
高村佳子―――総務部の女子行員。
柚木圭一―――神谷の元部下。
宮前毅――――本部審査部。
小池敬二―――債権回収担当。
加瀬直紀―――元行員。
時田紀一郎――時田硝子の元社長。
時田恒夫―――時田紀一郎の息子。時田硝子の元専務。
久遠―――――時田硝子の元顧問弁護士。
川内好蔵―――時田硝子の元経理。

 犯人は「狐」を名乗っていました。なぜでしょうか?
 ネタバレ防止のために詳細は伏せますが、物語の終盤近くに稲荷神社の話が出てきて、犯人はそこから狐を名乗ることになったのだろう、ということが述べられています。
 稲荷神社といえば狐です。ただし、稲荷神が狐なのではなく、稲荷神の使いが狐なのです。
 それを踏まえて宗教的に解釈するならば、信心の篤い氏子の破滅に怒った稲荷神が、「狐」を使役して報復しようとしているのだ、と見ることもできます。もちろんこんな見方は迷信だとしりぞけることもできるでしょうが、人智を超えた存在に思いを馳せてみるのもいい。

【参考文献】
池井戸潤『銀行狐』講談社

池井戸潤「口座相違」

あらすじ…東都銀行渋谷支店で、誤った口座に振り込んでしまうという「口座相違」が起こる。銀行員の萬田は誤って振り込んでしまった橋本商会に詫びを入れようとするが、連絡が取れず、所在地にもそんな会社はなかった。

【主要登場人物一覧】
萬田武彦―――課長。
山崎紗絵―――行員。
田島利加―――行員。
梨田滋――――副支店長。
笹本―――――係長。
高橋―――――支店長。
柳井―――――融資担当。
橋本浩二―――橋本商会社長。
横川―――――横川プラスチック社長。
斎藤宏――――関西南銀行の行員。

 口座相違は話の発端に過ぎず、ここから更に色々と発展して行きます。ただ、ネタバレ防止の点から考えて、どこまで言っていいのか、ちょっとわかりません。

 それにしても、所在不明の口座ですか。今だったら振り込め詐欺なんかに悪用されそうですな。

【参考文献】
池井戸潤『銀行狐』講談社

池井戸潤「現金その場かぎり」

あらすじ…銀行の窓口で数百万円の金が消える事件が連続して起こる。灰原係長が調査する。

【主要登場人物一覧】
灰原係長―――本作の主人公。
吉川恭子―――テラー。
枡野理江―――テラー。
新田秋穂―――テラー。
本村渚――――テラー。
神田隆――――営業課長。
木山彰一―――行員。
伊沢良子―――お局様。
馬場浩一―――ブティック馬場の社長。

 タイトルの「現金その場かぎり」とは、金が盗まれた現場を押さえないとダメだということです。これはなかなか難しい。

 それはさておき、灰原係長は内部の人間による犯行を疑っています。銀行のセキュリティの厳しさとシステムの複雑さを考えれば、そういった事情に通じている内部の人間を疑うのは当然でしょうな。
 そういえば、上記の主要登場人物一覧をチェックすると、銀行外部の人間は最後の馬場浩一だけということに気付きます。とすると…おっと、ここから先はネタバレ防止のために伏せておきましょうかね。

【参考文献】
池井戸潤『銀行狐』講談社

池井戸潤「金庫室の死体」

あらすじ…破綻した城南相和銀行の支店の金庫室で、老婆のバラバラ死体が発見される。小松刑事は相棒の花山と共に捜査に乗り出す。

【主要登場人物一覧】
小松与一―――刑事。
花山寛――――刑事。
安永登志子――殺害された老婆。
加木屋誠吾――城南相和銀行の残務処理担当。
高橋義男―――城南相和銀行長原支店の元支店長。
竹村肇――――城南相和銀行の元行員。安永を担当。
竹村克江―――竹村肇の母。
近藤一樹―――城南相和銀行の元融資課長。
井口充――――城南相和銀行の元行員。
相羽昭三―――倒産した会社の元社長。

 本書巻末の「初出誌」(P321)によると、「金庫室の死体」の初出は「小説現代」一九九九年十月号。だとすると、この物語はバブル崩壊後に金融機関の破綻が相次いだ世相が背景にあるということですか。そういえば長銀とか住専とかありましたっけ。
 尚、事件の舞台となった城南相和銀行は架空の存在ですが、名前の元ネタと思しき金融機関は実在します。即ち城南信用金庫と東京相和銀行で、城南信用金庫は現在も存続し、東京相和銀行は破綻してなくなっていることを付け加えておきます。
 ところで、事件現場は「大田区上池台一丁目」(P9)とありました。そこで手許の地図で調べてみると、バッチリ実在することが判明。洗足池から数百メートル東に行ったところにありました。最寄駅は東急池上線の長原駅です。

【参考文献】
池井戸潤『銀行狐』講談社

浅田次郎「薔薇盗人」

あらすじ…洋一少年が豪華客船の船長で航海中の父に手紙を送る。

 主人公の母親は夫が長期不在で暇を持て余した有閑マダム。そして主人公の担任の先生(ニック)は若くてイケメン。あっ…(察し)。
 どういうことかは本書を読んでのお楽しみとさせていただきますが、薔薇盗人の正体を含めて子供の洋一少年にはわからないものの大人の読者には「ああそうか」とわかる仕組みになっています。

【参考文献】
浅田次郎『薔薇盗人』新潮社

浅田次郎「ひなまつり」

あらすじ…夜、小学生の弥生が自宅で一人留守番をしながらボール紙の雛飾りを作っていると、そこへ母親の恋人だった吉井がやってくる。

 こんなセリフを発見。

「渋谷橋からね、渋谷が見えるんだよ。ねえ、ちょっとだけ」(P258)

 少々調べてみると、渋谷橋は今もあり、JR恵比寿駅の近くにあるらしい。恵比寿と渋谷は近いから、当時(1964年の東京オリンピック開催直前)は見えたのでしょうな。今はどうだかわかりませんが。
 尚、主人公と母親はそこから更に歩いて三軒茶屋の自宅まで歩いて帰るのですが、ちょっと距離があります。私は恵比寿から三軒茶屋まで歩いたことはありませんが、三軒茶屋から渋谷まで歩いた経験はあり、手許の地図で確認すると直線距離は大体同じくらい。う~ん、あれぐらいなら歩けるか。

【参考文献】
浅田次郎『薔薇盗人』新潮社

【追記】
 後日、恵比寿に立ち寄る機会があったので、渋谷橋を見てきました。渋谷橋はJR恵比寿駅の北東、駒沢通りと渋谷川が交差するところにあります。
 で、渋谷橋から渋谷方面を撮影した写真がこちら。

渋谷橋

 狭い川の両岸にビルやマンションがびっしりと建っており、渋谷は見えませんでした。

浅田次郎「佳人」

あらすじ…老母が自分の部下(吉岡)に見合いをさせてはどうかとすすめてくる。とりあえず吉岡と母を会わせてみることに。

 ユーモアあふれる小品。
 ネタバレ防止のために結末は伏せておきますが、最後のオチには笑っちゃいました。ともかくもハッピーエンドってことでいいんじゃないでしょうか。

【参考文献】
浅田次郎『薔薇盗人』新潮社

浅田次郎「奈落」

あらすじ…高層エレベーターで転落死した男の葬儀が執り行われる。

 葬儀に参加した者たちの会話を通して、故人(片桐忠雄)の人物像が浮き彫りになってゆく、というものです。最初はOLたち、次に通夜の番人、そして会社の同期2人、最後に会長と社長。
 ただし、彼らは事件の全体像を把握しておらず、又、各人の情報を取りまとめる探偵役も出てこない。ネタバレ防止のために結末は伏せておきますが、彼らの語ることがどこまでが真実でどこまでが嘘か確かめようがないまま話が終わっており、モヤモヤしたものが残りましたわ。

【参考文献】
浅田次郎『薔薇盗人』新潮社

浅田次郎「死に賃」

あらすじ…会社社長の大内惣次は、親友の小柳がどうやら大金を払って安らかな死を迎えたらしいことを知る。

 安らかな死。つまりは安楽死ですか。
 現代日本ではまだ安楽死は認められていないし、よしんば認められたとしても要件は厳しくなるから、大金を払ってでも安らかな死を迎えたいという需要はあるのかもしれません。
 しかし、技術的にそれが可能なのか(それができるレベルの医療技術を提供できるのか)、倫理的・法律的問題、遺産から「死に賃」分を減らされた遺族の不満など、ちょっと考えただけでも障害は多い。

【参考文献】
浅田次郎『薔薇盗人』新潮社

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