福田恒存訳『リチャード三世』新潮社(2)クラレンス公ジョージ
前回、クラレンス公ジョージに言及しましたが、冒頭のリチャードの長い独白の直後にそのジョージが登場します。逮捕されて身柄をロンドン塔へ送られるところです。なぜそんなことになったのかというと、とどのつまり、リチャードの陰謀です。仕事が早いなあ。
ともあれ、ジョージアに対してリチャードはそ知らぬ顔で同情する素振りを見せ、共に歎いてみせます。「きっとお助け申し上げる」(P15)と申し添えて。
どの口が言うかと思いますが、ともかくもここでリチャードは「偽善」という手を使っています。この偽善はその後も度々出てくるので(例:第三幕第七場での祈祷)、これはリチャード三世の武器の一つだと言えます。
それから、リチャードはジョージを見送る際に、こんなセリフ(独白)を吐いています。
グロスター さあ、二度と戻らぬ旅路を辿るがよい、お人好しの凡くら、クラレンス、俺はお前が大好きだ、だから、すぐにも天国へ送りとどけてやる、天の方で受取ってくれさえすればな。(P16, 第一幕第一場)
格調高く(?)述べていますが、要するに「バカめ、さっさと殺してやる」ということです。又、最後の「天の方で受取ってくれさえすればな」は、ジョージが天国に行けるような善人ではないとリチャードが見ているとも取れます。
ちなみにクラレンス公ジョージは以前、ランカスター派に寝返った後、更にヨーク派に寝返っており(『ヘンリー六世』でもそのシーンが出てくる)、寝返りの罪は一応は赦されているものの、油断のならない人物と見なされていてもおかしくはない。ランカスター派という強大な敵が壊滅したことで、エドワード四世王や王妃がこういった人物の排除に向かったのであり、リチャードはそれをこっそり後押ししてやったのだ、とも考えられます。
【参考文献】
福田恒存訳『リチャード三世』新潮社(目次)
【関連記事】
シェイクスピア(目次)
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