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藤山雷太像(慶應義塾大学日吉キャンパス)

 神奈川県横浜市港北区の慶応義塾大学日吉キャンパスにある、藤山雷太像の碑文を解読してみました。

藤山雷太像

 尚、銅像の背後の建物の看板には「慶應義塾藤山記念館」とあります。

【碑文】
藤山雷太君
 
    財團/法人 藤山工業圖書館由来記
 願ンバ予ガ實業界ニ身ヲ投ジテヨリ殆ド五十餘年ソノ間銀行、鐡道、
保険、信託等各種ノ事業ニ関與シタリト雖モ主トシテ経營セシハ芝浦製
作所、王子製紙株式會社、大日本製糖株式會社等ノ工業會社ナリ、換言
スレバ畢生ノ力ハ我ガ工業發展ノ為メ盡シタリト云フモ可ナリ、今ヤ是
等ノ事業ガ日ニ益盛ンナルハ老来殊ニ喜ビニ堪ヘザル所ナリ、
 サレド予ガ工業報國ノ志ハ之ヲ以テ止ム可キニ非ズ、将来一般ノ工業
界ヲ裨益スル所アラント欲シ工業圖書館建設ノ計畫ヲ樹テ隣樓ノ高臺ヲ
相シタルハ大正四年大日本製糖株式會社社長在職中ナリキ、然ルニ歐洲
戰亂ノ為メ建築遅延漸ク工成リシ時大正ノ大震災ノ為メ全壊ノ不幸ヲ按
リ直ニ再建築ニ着手シ遂ニ昭和二年落成スルニ至レリ、九月十三日予ノ
誕辰ヲ期トシテ開館セシニ尓来幸ニ時勢ニ投ジ連年盛況ニ赴キ館内狭隘
ヲ感ズルニ至リシヲ以テ本季更ニ出資ヲ倍加シテ金貮百萬圓トシ、増築
ヲ為スト共ニ又設備ヲ改善シ基礎ノ鞏固ヲ計レリ
 今ヤ支那事變ニ伴ヒ将来我ガ産業ノ發展ハ期シテ待ツ可ク本館ノ使命
愈重キハ予ノ甚ダ本懐トスル所ナリ、偶増築竣工ニ際シ一言ソノ由來ヲ
記スルコト斯ノ如シ
 昭和十三年臘月    従五位勲三等/貴族院議員 藤山雷太撰并ニ書

【現代語訳】
   財団法人 藤山工業図書館由来記
 私が実業界に身を投じてからおよそ50余年、その間、銀行、鉄道、保険、信託など各種事業に関与してきたのだが、主に経営していたのは芝浦製作所、王子製紙株式会社、大日本精糖株式会社などの工業会社である。言い換えるなら、私の人生は工業の発展に尽力してきたと言える。今、これらの事業が日に日に盛んになっているのは、老人の身としては喜ばしい限りである。
 しかし、私の工業で国に報いるという志はこれだけで終わっていいものではない。将来、一般の工業界に有益になってほしいと思って工業図書館建設の計画を立て、建物の建設を開始したのは大正4年(1915年)の大日本精糖株式会社社長在職中の時であった。ところがヨーロッパの戦乱(第一次世界大戦)により建築が遅れ、ようやくできあがった時には大正の大震災(1923年の関東大震災)によって全壊という不幸な事態に見舞われ、ただちに再建に着手し、ついに昭和2年(1927年)に落成するに至った。9月13日の私の誕生日に開館したのだが、それ以来、幸いにして時流に乗って、毎年盛況となり、館内が狭くなってきたのを感じるようになったので、今期はさらに出資を倍加して200万円を出し、(建物を)増築するとともにまた設備を改善して基礎を強固なものとしようとはかった。
 今、支那事変(日中戦争)により、将来の産業の発展が期待されており、本館の使命がますます重くなっていることは私が心から望むことである。このたび増築の竣工に際して、一言その由来を記すことは、このようなものである。
 昭和13年(1938年)12月 従五位勲三等・貴族院議員 藤山雷太撰文並びに書く

 「願ンバ」…? いきなりどう読んでいいものかわからず当惑しました。思案した結果、「願(ねがわく)ンバ」だと思い至りました。又、これ以外にも読むのに困る箇所が散見されます。私の考察なので絶対に正しいとは言い切れませんが(気になる方は各自お調べ下さい)、「樹(た)ツ」「按(こうむ)リ」「直(ただち)に」と読みました。それにしてもこれ、藤山雷太の文章の癖でしょうかね。
 それから、現代語訳に際しては、カッコにて適宜情報を補ってわかりやすくしました。例えばヨーロッパの戦乱といえば時代的に第一次世界大戦(1914-1918)を指すものと思われたので、第一次世界大戦の語を入れておきました。

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