松岡和子訳『終わりよければよべてよし シェイクスピア全集33』筑摩書房
あらすじ…前伯爵の主治医の遺児ヘレンは現伯爵バートラムに恋をしている。フランス王の難病を治して夫を選ぶ権利を手にし、憧れのバートラムと結婚するが、彼は彼女を嫌って逃亡、他の娘を口説く始末。そこでヘレンがとった行動は――。(裏表紙の紹介文より引用)
主人公のヘレンが凄い。自らの才覚と機略で身分違いの恋など幾多の障害を乗り越えて、手に入れるべきものを手に入れているのですから。
一方、その配偶者であるバートラムはというと、戦争で手柄を立ててはいるものの、後半はかなり情けない有り様になります。第五幕第三場でバートラムが主君(フランス王)や母親の目の前で「悪行」を追及されて崩壊してゆくところなどはその白眉でしょうな。
ちなみに、最後の方でこんなセリフがあります。
バートラム 陛下、ヘレンがもしこの経緯を明らかにしてくれるなら、
私はいつまでも、いつまでも彼女を愛します、心から。(P205)
ネタバレ防止のためにどういう経緯でこれを語ったのかは伏せますが、この時のバートラムは精神的にボロボロだったはず。そんな彼がゲッソリやつれて死んだ目でこのセリフを言っている姿が目に浮かぶようです。こいつ、一生ヘレンに頭が上がらないんでしょうね。
【参考文献】
松岡和子訳『終わりよければよべてよし シェイクスピア全集33』筑摩書房
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