司馬遼太郎「冷泉斬り」
あらすじ…長州浪士の間崎馬之助は、攘夷志士仲間から絵師・冷泉為恭の暗殺(志士たちの言葉を借りれば「天誅」)に誘われる。だが、馬之助は乗り気でなかった。
なぜ一介の絵師が狙われるのかというと、冷泉為恭は三条実美の屋敷に出入りしており、そこで得た機密情報を京都所司代に漏らしているのだという。なるほど、スパイなら狙われるのも理解できます。
しかしこの冷泉為恭はスパイとしては小物の部類で、小遣い稼ぎの情報提供者といった程度。しかも浪士のところまで噂が流れてくるということはスパイだと完全にバレているわけで、もうスパイとしては使い物になりません。
ちなみに物語の途中で突然、坂本竜馬が登場します。そして、「天誅さわぎなどは、愚劣すぎる」(P189)などと言ってこれまた急に去って行きます。これは作者(司馬遼太郎)が読者へのサービスとして人気者の坂本龍馬を出演させて、彼に自分の言いたいことを代弁させているような気がしました。
【参考文献】
司馬遼太郎『幕末』文藝春秋(目次)
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