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柳田國男「日本の祭」

あらすじ…日本の祭について語る。

 日本の祭の最も重要な一つの変り目は何だったか。一言でいうと見物と称する群の発生、すなわち祭の参加者の中に、信仰を共にせざる人々、言わばただ審美的の立場から、この行事を観望する者の現われたことであろう。(P248)

 それ以前は村の氏子、即ち信仰を共にする人たちだけが祭りに参加するというものだったのが、今では上記に引用した状態になっていると説いています。
 尚、著者(柳田國男)はその後で、「前年私は甲州の御岳に参ったとき、ちょうどその日が夏の祭礼の日だったので、旅人として詳しく拝観することができた。」(P249)と述べて祭礼を描写しており、民俗学者として貴重な資料の収集になっていたことがわかります。即ち、自身も見物の一人としてその恩沢を享受しているのです。

 さて、私も見物の一人として祭りに参加した時のことを語らせていただきます。「お前の体験なんて聞きたくねえよ」と思う人もいるかもしれませんが、祭りのサンプルの一つとしてお読みいただければ結構。
 東京都世田谷区下北沢に、下北沢天狗まつりというものがあります。ここ最近は新型コロナウイルス(COVID-19)の流行のせいで取りやめになっていますが、天狗の練り物行列が祭りの名物となっています。
 なぜ下北沢に天狗なのか? 練り物行列のスタート地点である真竜寺は別名、下北沢道了尊といい、私なんぞは「ああ、大雄山最乗寺の道了尊だな」と感付くことができましたが、関係者以外でそのことに思い至るものがどれだけいることか。
 ちなみにその真竜寺は今はもうなくなっていて、跡地には「下北沢道了尊跡の碑」がひっそりと立っています。つまり、信仰の拠点が失われているわけです。それでも祭りの公式サイトを見ると、天狗グッズの販売は続けているし、疫病が終息すれば天狗まつりを再開するようです。又、祭りの主催が商店街の振興組合となっており、宗教の祭礼というより商店街のイベントと言った方がよいでしょうな。信仰どこ行った?
 そうそう、信仰といえば、インバウンド華やかなりし頃には外国人観光客と思しき人たちを見かけましたっけ。彼らは見物の一員でしたが、異教徒です。信仰を共にせざるというより、全く別の信仰を持つ人たちです。
 柳田國男の時代から半世紀以上を経て、日本の祭はここまで変化してきたという一例として下北沢天狗まつりを取り上げました。もっといいサンプルが他にあるかもしれませんが、私は寡聞にして知りません。知りたければ、それこそ見物の一人として各地の祭礼に参加し、柳田國男の如く具(つぶさ)に観察してみるといいでしょう。

【参考文献】
『柳田國男全集13』筑摩書房(目次)

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