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尾崎秀樹『にっぽん裏返史』文藝春秋(4)義経の首

 源義経は衣川の高館で自刃し、その首は鎌倉へ送られた、というのが正史です。
 しかしその首は偽首で、実は義経は生きて脱出していた、という話があります(義経の生脱説話)。本書では三陸海岸、竜飛崎、北海道の平取と、義経の足取りを追っています。しかしさすがにそこまでで、大陸に渡ってジンギスカンになったとまでは書いていません。
 ちなみに本書では書かれていないことなのですが、この時鎌倉に送られた義経の首にも後日譚が残っています。伝説によると、海岸に打ち捨てられた義経の首が川をさかのぼり、漂着した地で祀られたという。川をさかのぼるのは恨みの強さを表します(平将門の首は空を飛んだ!)。又、祀られたのは藤沢市の白旗神社で、その近くには義経首洗いの井戸や弁慶塚があります。
 白旗神社の伝説を採用するならば、義経の首は本物だったということになり、生脱説話が成り立たなくなってしまいます。そうなると、本書で追っていたのは一体誰の足取りなんだ、ということになりかねない。

【参考文献】
尾崎秀樹『にっぽん裏返史』文藝春秋

【『にっぽん裏返史』目次】
「鼎談・歴史の見方と日本史の謎」
(1)北白川能久親王の死
(2)慶安事件の四日間
(3)柳生飛騨守の義歯
(4)義経の首

【義経の首関連記事】
江戸歌舞伎「御摂勧進帳(ごひいきかんじんちょう)」
白旗神社&伝義経首洗井戸(日記)
高木卓訳『義経記』河出書房新社(8)
弁慶塚(日記)

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