尾崎秀樹『にっぽん裏返史』文藝春秋(1)北白川能久親王の死
北白川能久親王は近衛師団長として台湾に進軍するも、マラリアにて陣没しました。死因がマラリアであることについて著者(尾崎秀樹)は、彼を診断した木村達軍医の証言を引用した上で、「疑いを容れる余地はない。」(P62)と述べています。しかし話はそれだけにはとどまらない。
ところが台湾では当時から、おかしな風説が民衆の間で語りつがれていた。
それは嘉義と台南を結ぶ、ほぼ中間に近い義竹庄という村落で、能久親王は台湾の抗日ゲリラに襲われ、首を切られて陣没したというのである。台湾の歴史学者・韓石麟はその人物の名前まで明記し翁玉丕と記している。なかには台湾人の一女性を手ごめにしようとして、逆に隠していた凶器で突かれたのがもとだというあやしげな噂も伝えられ、陣没の日を十月十一日とする説もある。(P62)
日本軍に抵抗した台湾人にしてみれば、敵方の大将の一人が死ぬのは結構なことだが、マラリアで死んだとしたら自分たちは彼の死に対して何もしていないことになる。ここは自分たちの抵抗の結果であってほしいという願望があって、それが「おかしな風説」を生み出したということなのかもしれません。
【参考文献】
尾崎秀樹『にっぽん裏返史』文藝春秋
【『にっぽん裏返史』目次】
「鼎談・歴史の見方と日本史の謎」
(1)北白川能久親王の死
(2)慶安事件の四日間
(3)柳生飛騨守の義歯
(4)義経の首
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