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小泉八雲「死骸にまたがる男」

あらすじ…離縁されて憤死した女の死体の様子が異常であった。元夫が陰陽師に相談すると、陰陽師は彼に、その死体に一晩中またがっているよう指示して立ち去る。夜、死体が動き出し…。

 この話の最後の方で、作者(小泉八雲)はこんなことを述べています。

 この話の結末は、どうも道徳的に満足できるようには思われない。この死骸にまたがった男が発狂したとも、髪が白くなったとも記録されていない。ただ、「男泣く泣く陰陽師を拝しけり」と述べられているだけである。この物語につけてある注記も同じように失望すべきものである。(P26)

 注記の引用は省くが、上記の最後の一文からして、作者がこの話の結末に失望していることは明らかです。
 だがちょっと待ってほしい。いかなる話も、道徳的に満足できるものでなければならない、という制約があるわけではない。常人には理解できない話や、人間の倫理を超えた話などいくらでもあるからです。
 寧ろこの話の醍醐味は、死体が動き出して男を殺そうとすることと、当の標的がその死体にまたがってその様子をまざまざと見せつけられる恐ろしさがあります。道徳よりも恐怖が勝っている、と言ってよいかもしれません。

【参考文献】
上田和夫訳『小泉八雲集』新潮社(目次)

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