小泉八雲「悪因縁」
あらすじ…『牡丹燈籠』の幽霊の話を翻訳してみることにした。
牡丹燈籠の幽霊譚は有名なのでここでは省略。お露という女性が死んで幽霊となってカランコロンと萩原新三郎のもとへ夜な夜な通い、そして遂には…とここまで書けば思い出す人もいることでしょう。
さて、物語の最後の方で、作者(小泉八雲)は「新三郎は見下げはてた奴です」(P358)と、萩原新三郎に対して手厳しい評価をしています。その後も「新三郎は仏教徒です――後にも先にも、何百万の生があるのです。そして、冥界から戻ってきた娘のために、この浮世の生命さえ捨てようとしないほど利己的でした。いや、利己的というよりも、臆病だったのです。生れも育ちも侍なのに、坊主に頭を下げて幽霊から助けてもらわなければならなかった。どのみち、くだらない奴なのです」(P359)と非難を続けており、愛し合っているなら後追い自殺しろとでも言わんばかりです。
いやいや、そう死にたくはなれませんよ。たとえ侍であっても。それに萩原新三郎が従容として死に赴いたら、この話はここまで面白くなっていたのだろうかと思わないでもない。
【参考文献】
上田和夫訳『小泉八雲集』新潮社(目次)
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