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スタインベック「逃走」

あらすじ…トルレス夫人は3人の子供を抱えながら農園を切り盛りしていた。そんなある時、19歳になる長男のペペを町へ買い物に送り出す。その日はペペは町に泊まったのだろうと思って一家は床に着くが、ペペは夜明け前に突然帰ってくる。あろうことか人を殺したというのだ。トルレス夫人はペペの逃走の準備を整えて、再び送り出す。

 物語の前半はのんびりした描写が続き、とてもタイトルの「逃走」とは相容れない有様です。しかしペペが帰宅してからは急転直下、物語の視点はトルレス夫人からペペに移り、緊迫した逃走劇が展開されます。なるほど、これは前半と後半とでコントラストになっているのか。
 さて、後半の主人公のペペですが、前半と後半とではキャラクターが変わっているように見受けられます。彼は「いつもにこにこしている、おとなしい、情愛深い青年ではあるが、たいへんな怠け者だった」(P47)のが、逃走の段では「顔はきびしく、ゆるみがなく、男らしかった」(P62)、「顔は無表情だったが、それにしても男の顔だった」(P64)とあります。
 人を殺して一皮むけたのでしょうか。だとしても、賢明なる読者諸氏はペペを見習うわけにはいかない。人を殺した報いを受けねばならないのですから。実際、ペペはこの後…おっと、ここから先はネタバレ防止のために伏せておきましょうかね。

【参考文献】
大久保康雄訳『スタインベック短篇集』新潮社(目次)

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