ロバート・ライヒ:トランプが経済を再開させたい本当の理由(2020年、アメリカ)
この動画は、YouTubeで観ました。
https://youtu.be/lCE4FMv1-ho
監督:カイル・パーカー
出演:ロバート・ライヒ
原題:Robert Reich: The Real Reason Trump Wants to Reopen the Economy
あらすじ…新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を振るう中、トランプは経済を再開させたがっている。その本当の理由を明らかにする。
まずは拙訳をどうぞ。
【拙訳】
ライヒ「ドナルド・トランプはイライラしています。経済が戻らない限り、11月(の大統領選挙)では彼は負けると内部調査が示しています。ではトランプ再選の戦略とは何でしょうか? 公衆衛生の専門家の警告を無視し、あらゆる犠牲を払って経済を再開することです。こちらが彼の致命的な4段の計画です」
トランプが経済を再開させたい本当の理由
ライヒ「第1段階:所得補償を削り、人々が働きに出ざるをえないようにする。トランプの労働省は、レイオフされた労働者が仕事を取り戻すという申し出を『受け入れなければならない』ので、安全になる前に仕事に戻る危険性に関係なく失業給付は停止すると決定しました。潜在的に命に関わるウイルスに感染するか、自分たちの生計を失うかの選択を突きつけられるというのは非人道的です。無意味なことです。このパンデミックにおける集合的な健康は、多くの労働者ができるだけ家に居ることにかかっているのです」
ライヒ「第2段階:事実を隠蔽する」
トランプ「我々連邦政府は、検査をするために街角に立つことは想定していない。我々は検査するだろうが、3億2500万~3億5000万人を君たちが検査する必要はない。我々は凄い検査システムを持っている。我々は世界最高の―今は―最高の検査システムを持っている」
ライヒ「どれだけ多くのアメリカ人が感染したのか、誰も知りません。なぜならトランプ政権は検査を(わざと)のろのろし続けているからです。5月5日現在、3億3000万人以上のアメリカ人の内、750万人の検査が完了しただけです。ジャレッド・クシュナーが『大成功物語』と呼ぶものは何でしょうか? 屋内避難命令が最後に出た州の一つで最初に再開した州の一つであるフロリダは、コロナウイルスの犠牲者の数に関する検死官の統計を発表することをやめました。なぜならその数字は州の公式統計よりも高くなっているからです。しかし十分なデータなしでそのウイルスと戦うのは不可能です。政府屈指の伝染症専門家アンソニー・ファウチは、その再開の構えを警告しています。彼の言葉では、検査の大幅な増加なしでは」
ファウチ「本当に重大なリスク」
ライヒ「があるとのこと。当然のことながら、ホワイトハウスはファウチを下院の公聴会から締め出しました。トランプはクリスティ・グリム保健福祉省検査官を解任しました。彼女が全国の広範囲な検査及び病院のPPE(個人防護用具)の不足を詳細に記した報告書を発表した後に、です。彼の厳選された交代要員は、今やコロナウイルスワクチンの開発に関与する部門の所長を追放されたDr.リック・ブライトによって内部告発の苦情処理がなされるでしょう。Dr.ブライトの不平は、重大な供給不足についての彼の警告を政権が繰り返し無視し、科学的に証明されていないウイルスの治療法(※ハイドロキシクロロキン)を採用するのを彼が拒否したのでその地位から逐われたというものです」
ライヒ「第3段階:『自由』と『解放』についての誤った物語を押し付ける。数週間前、トランプはミシガンのような州を『解放』するよう市民に呼びかけました。(ミシガン州の)グレッチェン・ウィットマー知事は厳格な『屋内避難』の州法を課していたのです。ミシガン州は人口がアメリカで10番目にもかかわらず、3番目にCOVID-19の死者が多い。ウィットマーがその法律を5月28日まで延長した時、銃を持った抗議者たちが『彼女を投獄しろ!』と唱えながら州庁舎に押し寄せました。トランプは彼らの行動を非難するのではなく、ウィットマーが彼らと『取引をする』ことを提案しました。一方、ウィリアム・バー司法長官は司法省に、『個々の市民の憲法上の権利と市民の自由に違反する可能性のある』ロックダウン措置を課す州または地方自治体に対して法的措置を取るように指示しました。『自由』をはき違えていますよ。自由は、あなたが自分の無責任と無知によって他人の生命を危険にさらす権利を持っている、という意味ではありません。自由は大金持ちの株式ポートフォリオを強化するために人々を危険な環境の仕事に戻すことを強いてはいません。自分の生命を危険にさらす仕事を受け入れる以外に選択肢がない人々にとって自由は意味がないのです」
ライヒ「第4段階:感染拡大の訴訟から企業を守る。トランプはそのウイルスに感染した労働者または顧客による法的措置に対して、再開する企業に『責任の盾』を与えることを推進しています。彼は食肉加工工場を開いたままにするために防衛生産行為を用いるだろうと言っています。食肉加工業者にとってCOVID-19の高い感染率と死亡率があるにもかかわらず、です」
トランプ「責任問題を解決するだろう」
ライヒ「ミッチ・マコーネルは、次の緊急経済対策には労働者もしくは顧客に感染を引き起こすコロナウイルスに対する法的免責が含まれていると主張しています。『我々は責任をもってレッドラインを引く』マコーネルは言います。『それなしでは上院を通過しないだろう』 しかしですよ、企業が人々を安全に保つインセンティブがないとすると、経済はどうやって安全に再開できるのでしょうか? できない、無理です」
ライヒ「最後の論点を申し上げます。経済を再開する最大の障害は、パンデミックなのです。適切な検査と追跡―私たちが現在行なっているものよりも大規模な―なしでの急激な再開は、さらに多くの死者数とさらに長い経済危機をもたらします。大統領の初歩的な責任は、公共の安全を保ち続けることです。しかしドナルド・トランプはあまり気にしていませんでした。彼は自分の再選の可能性を高めるために経済を再開させようとしており、彼は契約を結ぶためにアメリカの福祉を売り払っているのです。コストに関係なく、ドナルド・トランプの主な関心事はいつも自分自身なのです」
過去のパンデミックの歴史を振り返れば、今回の新型コロナウイルスでも第2波、第3波が襲来することは明らかです。経済を再開させた途端にそれが起こればどんな惨状になるのやら…。
尚、トランプが経済を再開させたからといって、彼が望むような(=自身の再選につながるような)景気回復に直ちにつながるとは思えません。新型コロナの感染で経済に打撃を受けた国は世界中にあり、世界的な不景気に陥っているからです。
【関連記事】
ドナルド・トランプ(目次)
« 手洗い(2020年、日本) | トップページ | 庭小人の襲撃(2020年、アメリカ) »
コメント