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太宰治「佐渡」

あらすじ…佐渡へ旅行する。

 「みみずく通信」の続きに当たる作品。「みみずく通信」で作者(太宰治)は新潟の高校で講演をしており、その直後に佐渡に渡っています。
 さて、そんな太宰ですが、佐渡行きの船の中で早くも佐渡行きを後悔しています。

 けれども船室の隅に、死んだ振りして寝ころんで、私はつくづく後悔していた。何しに佐渡へ行くのだろう。(略)誰も褒めない。自分を、ばかだと思った。いくつになっても、どうしてこんな、ばかな事ばかりするのだろう。私は、まだ、こんなむだな旅行など出来る身分では無いのだ。家の経済を思えば、一銭のむだ使いも出来ぬ筈であるのに、つい、ふとした心のはずみから、こんな、つまらぬ旅行を企てる。(P125-126)

 悔恨の言葉はまだ続きますが、このくらいにとどめておきます。
 私も、ふと思い立って遠出をして後悔の念に駆られることがあるから、気持ちは(少しは)わかります。ここで具体的な場所の名前を書くとその土地の悪口を言うことになりかねないので具体名は伏せますが、観光地として開発されすぎていて観光客でごった返しているところなんかは、私には合わないので後悔することがあります。行く途中でも、行った後も。
 しかしですよ、太宰さん。あなたは「何しに佐渡へ行くのだろう」とおっしゃいますが、アンタそもそも小説家じゃないですか。だったら小説の取材という大義名分が使えますぞ。

【参考文献】
太宰治『太宰治全集4』筑摩書房

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