落合信彦『モサド、その真実 世界最強のイスラエル諜報機関』集英社(3)
本書の第一章ではイサー・ハレル(元モサド長官)、第二章ではメイアー・アミット(同じく元モサド長官)にインタビューしていますが、第三章では趣向を変えて、自由レバノン軍の指導者サード・ハダッド少佐にインタビューしています。
これはこれで興味を引くところはあるのですが、今回の一連の書評ではスパイについて取り上げたいと思っているので省略。
というわけで、第三章は飛ばして第四章を取り上げます。第四章ではエジプトに潜伏していた元スパイ、ウルフガング・ロッツが登場。ハレルとアミットが指揮官・司令官クラスだったのに対して、ロッツは現場の最前線で働いていた人物です。
ところで、スパイが他の身分になりすますことをカバーというのですが、そのカバーに失敗している例としてこんな人物が取り上げられています。
ドイツ人でゲアハルト・バウハという名だったが、彼はあるドイツの大企業の総支配人としてエジプトに駐在していた。私は初めから彼がおかしいと感じていた。ピラミッド・ガーデン市のデラックスな館に住み、金は使い放題だがいつも仕事をしている様子はない。カイロのダウンタウンにオフィスさえもないのだ。自宅の書斎をオフィスとして使っているという。ドイツのコンツェルンの総支配人にしてはビジネス感覚もあまりありそうにない。(P195-196)
見事な観察と推理です。大金持ちの道楽者なら仕事しないで金は使い放題なのかもしれませんが、大企業の総支配人ならまず仕事をしなきゃならない。金の使い道だって、まともな企業なら監査のチェックが入りますからね。
つまり、こんな奴がいたらそいつはスパイだぞ、とロッツは教えてくれているわけです。
ちなみにロッツはどんなカバーをしていたかというと、元SS(ナチス親衛隊)将校という、ユダヤ人とは正反対の存在になりすましていました。こいつはすさまじい。
【参考文献】
落合信彦『モサド、その真実 世界最強のイスラエル諜報機関』集英社
【目次】
『モサド、その真実 世界最強のイスラエル諜報機関』(1)
『モサド、その真実 世界最強のイスラエル諜報機関』(2)
『モサド、その真実 世界最強のイスラエル諜報機関』(3)
【スパイ映画】
・スパイ・ハード
・007 スカイフォール
・007 スペクター
・デュプリシティ スパイは、スパイに嘘をつく
・陸軍中野学校
・陸軍中野学校 雲一号指令
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