菅野完『日本会議の研究』扶桑社
安倍晋三政権を支える圧力団体・日本会議とは何かを突き止めようとした労作。尚、私がここで「突き止めようとした」と書いたのは、本書巻末の「むすびにかえて」(P295-298)で著者が「あまりにも大量の『書かねばならぬのに書けなかったこと』がある」(P295)と述べているのを受けてのことです。
とはいえ、生長の家(※)との関係や元号法制定運動、憲法改正など大まかな流れはわかるので、一般教養として読むには充分だと思われます。
ところで、本書において著者(菅野完)は色々と毒舌をふるっています。例えば2015年の「今こそ憲法改正を! 武道館一万人大会」についてリポートしたくだりで、こんなことを書いています。
国歌斉唱の他に、会場の一体感が生まれた瞬間があと2つある。「日本国憲法を作った国・アメリカ出身です」と自己紹介したケント・ギルバートが「(9条を堅持するのは)怪しい新興宗教の教義です」と発言した瞬間と、当日予告編が初上映された改憲プロパガンダ映画のプロデューサーだという百田尚樹が「(日本人の目をくらますのは)朝日新聞、あ、言ってしまった」と発言した瞬間だ。
ケント・ギルバートの発言は、彼がモルモン教の宣教師として来日したことや当該発言が崇教真光や霊友会や佛所護念会教団の動員によって占められる聴衆に向かって発せられたことを考えると、「2015年おまえがいうな大賞」でも授与したいところだ。百田尚樹の発言も「まだそのネタで飯を食おうとしてるの?」と哀れみをもって接するべき性格のものでしかない。(P131)
よくもまあここまで書いたものだ。これは著者の性格によるところが大きいんじゃないかと思います。
読者の皆さんは、本書を読む上で彼の毒気に当てられないようご注意下さい。
尚、引用文中に出てきた「改憲プロパガンダ映画」とは、どうやら「世界は変わった 日本の憲法は?」というドキュメンタリー作品らしい。これは40分程の長さで、(本記事を書いている時点では)YouTubeで無料公開されています。
この映画についても言いたいことはありますが、そもそも本記事は『日本会議の研究』のレビューなので割愛。ともかくも、日本会議の主張を知る上で貴重な資料だと言えます。
※本書の中でも度々指摘されているが、生長の家は現在、政治運動からは手を引いている。
【参考文献】
菅野完『日本会議の研究』扶桑社
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