刑事コロンボ:ロンドンの傘(1972年、アメリカ)
監督:リチャード・クワイン
出演:ピーター・フォーク、リチャード・ベイスハート、オナー・ブラックマン
原題:Columbo: Dagger of The Mind
備考:ミステリー
あらすじ…『マクベス』の公演を直前に控えたロンドンの劇場に、スポンサーのサー・ロジャー・ハヴァーシャムが乗り込んできて、マクベス役のニコラス(ニック)・フレームとマクベス夫人役のリリアン・スタンホープと揉め、リリアンはロジャーを殺してしまう。ニックとリリアンはロジャーが自宅の階段から転落したように装う。一方その頃、アメリカから刑事コロンボがスコットランドヤードに見学に来ていた。
この話は明らかに『マクベス』を下敷きにしているな、と感じました。
ニコラスとリリアンの夫婦がそれぞれマクベスとマクベス夫人を演じているのみならず、ニコラスはマクベスのセリフを時折言っています。又、立場が上の者(この話ではサー・ロジャー、『マクベス』ではスコットランド王ダンカン)を殺して一時の栄華を得るけれども結局は破滅する、という点が共通しています。
それから、この話の最後でニコラスは気が狂ってしまい、リリアンは何とかそれを取り繕おうとするシーンが出てきますが、『マクベス』第三幕第四場の宴会のシーンでも似たようなくだりが出てくるから、そのモチーフをここで使ったのでしょう。
次に、タイトルについて。
邦題「ロンドンの傘」は事件の重要アイテムとして登場するからまあいいとして、問題は原題"Dagger of The Mind"です。心の短剣…?
というわけで調べてみると、『マクベス』第二幕第一場に"A dagger of the mind"の語を発見。これはマクベスがダンカンを殺そうとする直前、マクベスの前に出現した短剣の幻影で、マクベスに王殺しの決意を促す効果をもたらしています。
ただし、幻の短剣はこちらの話には登場しません。そもそも凶器は短剣じゃないですし。もっとも、正気を失ったニコラスにはそれが見えていたかもしれませんな。
【参考文献】
福田恆存訳『マクベス』新潮社
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