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怪猫逢魔が辻(1954年、日本)

監督:加戸敏
出演:入江たか子、坂東好太郎、勝新太郎、阿井美千子、村田千英子
原作:高桑義生
備考:ホラー、怪猫映画

あらすじ…女歌舞伎の座頭・市川仙女は中村座の桧舞台に立つ事となったが、仙女に代わって座頭になる野望を抱く坂東染若の奸計にはまる。花道から転落し、負傷した仙女は、傷薬と偽った毒薬により無惨な形相となった挙句、斬殺された。だが、どこからか現われた仙女の愛猫・美乃は主人の残血を舐める。それ以降、次々と怪異が起こり、仙女を陥れた者たちが襲われていく……。(パッケージ裏の紹介文より引用)

 まずは時代考証的なことを少々。
 女歌舞伎というちょっと聞き慣れない言葉が出てきたので調べてみたところ、阿国歌舞伎や遊女歌舞伎といった女性が演じる歌舞伎を女歌舞伎といい、1629年(寛永6年)には幕府から禁令が出ました。又、この作品の舞台となった中村座は1624年(寛永元年)にできており、両者はギリギリ同じタイミングで存在しうる。ただし、登場人物たちの風俗は江戸時代初期には見えないし、作中で言及されるようなお岩さんはもっと後の時代の人です。

 次に、あらすじはDVDパッケージの説明文を引用させていただきましたが、これでストーリーの殆どを言ってしまっています。ネタバレしてんじゃねえよと思うかもしれませんが、怪猫シリーズをある程度知っていれば(あるいは知っていなくても)後半の展開は予想できるってもんです。それに、そもそもここまで書いたのは私じゃない。

 それから、勝新太郎について。
 この作品で彼は瑞々しい好青年を演じていますが、正直言って印象が薄い。この時は新人で、人気に火がつく前です(勝新がブレイクするのは、悪役を演じた「不知火検校」)。

 尚、クライマックスの場面で演じられていた歌舞伎は「色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ)」(通称:かさね)で、この演目の中で女性の顔が無惨なことになって悪い男に殺される、というのは市川仙女と共通しています。
 この状況下でよくもまあ、こんなものを上演しようと思ったものだ。いや、ひょっとしたらこの演目は前もって決まっていて、寧ろこんなのを演じていたからこそ仙女の怨霊を「召喚」してしまったのかもしれませんな。

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