三島由紀夫「道成寺」
あらすじ…巨大な衣装箪笥がオークションにかけられる。とそこへ、踊り子の清子がやってきて、その衣装箪笥の恐るべき由緒を語る。
清子の話を整理すると大体こんな関係になります。
安珍が安(やすし)に、清姫が清子になっているわけですな。それから、謡曲「道成寺」では清姫が白拍子に化けて登場していましたが、それがここでは踊り子になっています。
ただ、清姫は安珍を殺しましたが、清子は安を殺してはいません。話によれば犯人は桜山氏、即ち不倫相手の夫です。清子が桜山氏を唆(そそのか)して安を殺害せしめたというのなら、清子も殺人の共犯(正確には殺人教唆)になるのでしょうが、どうもそういう形跡は見当たらない。
最後に、ラストについて。ネタバレ防止のために詳細は伏せますが、謡曲「道成寺」の結末よりは幾分か軽い感じがします。これはやはり、主人公が愛する者を殺したという十字架を背負っていないからでしょうかね。
【参考文献】
三島由紀夫『近代能楽集』新潮社
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