三島由紀夫「邯鄲」
あらすじ…次郎は乳母だった菊のもとを訪れ、彼女の家にある不思議な枕で寝る。
主人公(次郎)のキャラクターが凄い。
次郎 (言下に) ううん、僕は女を愛したことも愛されたこともありはしない。(P13)
次郎 友達なんて! はじめっから一人もいやしない。(P13)
次郎 学校なんかもうやめちゃったもの。
菊 それじゃあ世間で揉まれなすったのね。
次郎 ううん、家でぶらぶらしてただけさ。(P14)
つまり次郎は恋愛経験ゼロ、友達ゼロの中退ニートです。社会不適応にも程がある。
さて、ここから先はネタバレ注意。
次郎が邯鄲の枕で見た夢を整理してみると…
(1)美女:恋愛と家庭
(2)踊子:歓楽
(3)秘書:富
(4)紳士:政治的権力と名声
(5)老国手:死
次郎はこれら全てにひじてつを食らわせ続けます。そして最後に出てきた老国手は、正体を明かした上で次郎を毒殺しようとします。死ぬことで涅槃の境地に入らせようとしたのかな?
それはともかく、次郎はそれも拒否したところで目が覚めてみると、庭の花が咲いているという事態に。枕と花の因果関係はよくわかりませんが、次郎が枕の魔法を打ち破ったのは確かなようです。
こんなこと、常人にできることではあるまい。ああそうか、次郎は常人じゃないから社会不適応なのか。
【参考文献】
三島由紀夫『近代能楽集』新潮社
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