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スタニスワフ・レム『ソラリスの陽のもとに』早川書房

あらすじ…菫色の霞におおわれ、たゆたう惑星ソラリスの海。一見なんの変哲もない海だったが、内部では数学的会話が交わされ、みずからの複雑な軌道を修正する能力さえもつ高等生命だった! 人類とはあまりにも異質な知性。しかもこの海は、人類を嘲弄するように、つぎつぎと姿を変えては、新たな謎を提出してくる……(裏表紙の紹介文より引用)

 上記のあらすじは抽象的すぎてわかりにくいところがあります。そこで私なりにあらすじをまとめてみました。

 惑星ソラリスを覆う海は、それ自体が一つの巨大な知的生命体らしい。ということで人類は長年に渡ってソラリスと交信しようとし、ソラリスについて調べ続けていたが、うまく行かなかった。もうソラリス研究は打ち切られるかという時、心理学者クリス・ケルヴィンはソラリスの研究ステーションへと赴く。そこには、いるはずのない人間の気配があり、更に彼の目の前には、10年前に自殺したはずの妻ハリーが現われる。

 もちろんこれは全体のストーリーの一部分であり、この後どうなるかは読んでみてのお楽しみとさせていただきます。

 さて、アンドレイ・タルコフスキー監督の映画「惑星ソラリス」では序盤に出てきたバートンの証言が、こちらの原作小説では中盤の『小アポクリフォス』(P122-171)という章で登場します。
 アポクリフォス…? ああ、アポクリファ(外典)のことか。アポクリファとは旧約聖書に収録されなかった宗教文書の一群で、ユディトとホロフェルネスを描いた「ユディト記」や、格言を集めた「知恵の書」などがあります。アポクリファの扱いは各宗派によって異なるのでその価値について一概に言うことはできませんが、だとするとバートンの証言もそのようなもの、つまりはソラリスの学派によって扱いは異なっているのでしょう。

 最後に、ソラリスとは結局何だったのか? 物語の終盤、クリスとスナウトの会話の中で「答え」が提示されますが、それとて数多く提出された仮設の一つに過ぎず、決定打とはなりえていません。しかも、作品の終わりまで読んだとしても、決定的な答えが出るとは思えない。絶望。まさに絶望。
 こうなったら自分で答えをひねり出そうかとも考えましたが、やめておきます。私はソラリスに長く留まらず、報告書(即ちこのレビュー記事)を書いたらさっさと地球に帰還することに決めました。深遠な思考を放棄して逃避に走ったのだとそしられかねませんが、こうでもしないと私の今の頭じゃやって行けないのです。所詮はその程度のレビュー記事だと思ってご了承下さい。

【参考文献】
スタニスワフ・レム『ソラリスの陽のもとに』早川書房

【関連記事】
惑星ソラリス

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