藤野千夜「夏の約束」
マルオとヒカルのゲイカップルとその友人たちの日常を描いた群像劇。日常系のゆるい感じで話が進むので、比較的気楽に読み進めることができました。もっとも、LGBTの問題などが各所に潜んでいるので、それらについて考えだしたらキリがなくなりそうではある。
ちなみにタイトルの「夏の約束」とは八月にみんなでキャンプをしようというもの。深刻な話ではないので、読み進めるうちにマルオのように忘れてしまうかもしれません。
それはさておき、解説(らしきもの)を一つ。
「やっとクローゼットから出てきたんだね」(P296)
英語で隠れホモをクローゼット・クイーン(closet queen)といい、クローゼットから出るというのはゲイをカミングアウトすることです。上記のセリフはヒカルがマルオに言ったものですが、マルオはカミングアウトしたというよりも「社内でゲイだと知られた」(P296)、つまりはホモバレであり、寧ろクローゼットから追い出されたという次第。
【参考文献】
『芥川賞全集 第十八巻』文藝春秋
最近のコメント