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菊池寛「仇討禁止令」

あらすじ…高松藩士・天野新一郎は同志と共に婚約者・八重の父親で佐幕派の成田頼母を暗殺する。後に天野は明治政府に出仕して東京に住むが、そこへ八重とその弟・万之助がやってくる。万之助は父の仇を討とうとしていた。

「仇討禁止令」人物関係図

 ここで注意すべきなのは、成田頼母暗殺の実行犯の中に天野新一郎が入っているということを、万之助も八重も全く気付いていないということです。
 他の実行犯の中にはその後も生き残った者もいたし、計画を練っていた時に他にも同志はいたようだから、新一郎が犯行に加担していることを知っている人間は存外に多い。しかし彼らの口は堅かったようで、その秘密が万之助に漏れることはなかったものと推測いたします。
 それにしても、新一郎のドキドキ感がしんどい。これほどの秘密を抱えて生きるのがこんなにも辛いとは…。おそらく、この心の重荷が彼の寿命を相当削ったんじゃないでしょうか。

【参考文献】
池内紀・川本三郎・松田哲夫=編『日本文学100年の名作 第3巻 三月の第四日曜』新潮社

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