アンソニー・トゥー『サリン事件の真実』新風舎
著者はアメリカの科学者であり、毒物、化学・生物兵器の専門家です。
そのため、本書は松本サリン事件・地下鉄サリン事件を科学の視点から述べており、科学の知識、それもその方面(毒ガス)の知識がないとちょっと厳しい。一つ引用してみます。
松本で使われたサリンは三塩化リンから五ステップで精製され、最終的に高純度のサリン製造に成功している。一方、東京地下鉄に使われたサリンは一歩手前のジクロロメチルホスホン酸からつくったので、一晩で急造された。(P85)
おわかりいただけただろうか? もちろん、わかる人にはわかるんでしょう(私はわかりませんでした)。
ともかくも、本書は飽くまで科学の視点で書かれているので、「なぜ事件は起こったのか?」「宗教的意義は?」「社会的背景は?」などといった、いわゆる文系的な疑問には答えてくれない。もちろん科学も一面の真実であることに違いはありませんが、上記のような疑問をお持ちの方は他を当たるべし。
【参考文献】
アンソニー・トゥー『サリン事件の真実』新風舎
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