江戸川乱歩「二銭銅貨」
あらすじ…「私」と松村武は貧困のどん底にあえいでいた。一方その頃、電機工場で大金が盗まれる事件が発生する。犯人は捕まったものの、大金は行方知れずだった…。
「二銭銅貨」を読むのはこれで3回目くらいだったと記憶しています。
さて、今回読んでみると、新たな発見がありました。それは、松村が十円札を持って出かけた後、主人公が、
そして独りほくそ笑んでいるうちに、(P458)
とありました。この時点で、松村は自分の一見不可解と思える一連の行動の理由を主人公に説明していない。それにも関わらず主人公はほくそ笑んでいるのです。
これが何を意味するのかはネタバレ防止のために伏せておきますが、結末のどんでん返しの布石であることは間違いあるまい。
もっとも、ここに長々と書いてきたことは、江戸川乱歩の「熱心な読者」ならばとっくに気付いているかもしれません。あるいは、3回目でようやく気付いたことに「こいつは迂闊な奴だ」と思うかもしれません。
まあ、実際に私は迂闊なところがあって、推理小説を読んでいてもヒントを見落とすことがよくありますからね。そのせいでアガサ・クリスティーに何度出し抜かれたか知れやしない!
【参考文献】
池内紀・川本三郎・松本哲夫=編『日本文学100年の名作 第1巻 夢見る部屋』新潮社
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