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葛西善蔵「遊動円木」

あらすじ…「私」は奈良のT新夫婦と交流する。

 意味のわからない語を2つ、少々調べてみました。
 一つは「サーニン主義」(P27)で、これはロシアの作家ミハイル・アルツィバーエフの長編小説『サーニン』(1907)に由来する思想で、当時流行したらしい。
 ただ、作品中には「サーニン主義めいたものを書いたの」(P27)は何であるか明示も引用もされていないし、Tとの議論も詳述されていないので、この作品を読むだけならばサーニン主義について詳しく知る必要はないものと思われます。主人公とTとは当時流行の思想を用いて議論するような仲であった、程度にとらえておけばいいのかもしれません。
 もちろん、細かいことが気になってしょうがない人や、どこぞの気難しい文学部教授なんかは、こんな態度は許しがたいでしょうな。そういう人たちは…頑張って『サーニン』を読めばいいんじゃないでしょうか。

 それから、もう一つの意味のわからなかった語は、タイトルの「遊動円木」です。
 画像検索してみると公園の遊具の一種で、丸太を吊るしたものの上に乗って遊ぶらしい。
 作品内では後半に登場し、T夫人(浪子)がうまく乗りこなしています。で、夫のTも負けじと乗ろうとするがうまくいかない。一方、主人公は乗ろうとすらしていません。
 男がだらしないと思われるかもしれません。まあ、彼らは文士ですから。

遊動円木

【参考文献】
小川洋子編著『小川洋子の陶酔短篇箱』河出書房新社

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