中井英夫「牧神の春」
あらすじ…貴(たかし)は役に立たない考えばかりに取りつかれていた。そんなある時、貴の頭に角が生えてきて…。
貴君はノイローゼなのかな?
ちなみに、頭に角が生えるというのは、シェイクスピア劇で言及されたら女房を寝取られたことを意味し、『三国志』の魏延なら死亡フラグといったところです。
とまあ、あんまり役に立ちそうにないことを書きましたが、本作では貴君はこの後、牧神パンの如き姿に変身します。牧神パンに変身するのではなく、牧神パンの如き姿に、としたのは、彼が牧神パンらしいことをしていないと判断したからです。野山を駆け回ったりニンフを追いかけたりはしていますが、その程度ならばサテュロスでもやっている。
そうですねえ…葦笛を吹いたり、雄たけび(※)なんかをやったら違ってくるでしょうな。
※パンの雄たけびは恐慌(panic)をもたらす。panicの語源はPan。
【参考文献】
小川洋子編著『小川洋子の陶酔短篇箱』河出書房新社
« 狩り(2013年、ポーランド) | トップページ | ユルカ(2016年、ポーランド) »
「書評(小説)」カテゴリの記事
- 樋口一葉「この子」(2023.05.16)
- 樋口一葉「わかれ道」(2023.05.15)
- 樋口一葉「うつせみ」(2023.05.14)
- 樋口一葉「ゆく雲」(2023.05.13)
- 樋口一葉「大つごもり」(2023.05.12)
コメント