柳生一族の陰謀(1978年、日本)
監督:深作欣二
出演:萬屋錦之介、千葉真一、松方弘樹、西郷輝彦、大原麗子、原田芳雄、丹波哲郎
備考:時代劇
あらすじ…二代将軍・徳川秀忠が急死した。三代将軍の座を巡って、徳川家光派と徳川忠長派が争う。
同名のテレビドラマも存在しますが、そちらは未見です。
さて、まずは人物関係図をご覧下さい。
人物関係図では作品内での役名の横にカッコ内で本名(諱)を表記しました。例えば柳生但馬の但馬は但馬守という朝廷の官職から来ているのですが、歴史を記述する際にこの人物は柳生宗矩と表記するのが適当です。
又、何人かの登場人物についても少々説明しておきます。
徳川忠長と相思相愛になっている出雲の阿国は、阿国歌舞伎の創始者として日本史の教科書にも載るほどの有名人で、江戸時代初期の人物ではあるものの時代がちょっと合わない。
阿国を慕う名護屋山三郎に至っては安土桃山時代の戦国武将で、この時代にはとっくに死んでいるはずです。尚、名護屋山三郎は歌舞伎「参会名護屋」の主人公になっていたりします。
それから、小笠原玄信斎の養子で歌舞伎の女形(おやま)の中村雪之丞は、歌舞伎「雪之丞変化」の主人公。長谷川一夫主演の同名映画を当ブログでレビューしたこともあります。
さて、人物説明についてはこれくらいにとどめておきます。さすがに柳生十兵衛や春日局などについてはここで書くまでもないし、他のマイナーキャラやオリジナルキャラについては知識がないからです。
それでは、映画本編について述べることにします。
柳生但馬は徳川家光に向かって、
「親に会えば親を殺し、仏に会えば仏を殺す」(18:48)
と言っており、この部分は予告篇でも使われています。尚、予告篇では「親に会うては親を殺し/弟に会うては弟を殺し/仏に会うては仏を殺す」というテロップが入り、より物騒な感じになっています。
そもそも、どういう状況でこんなセリフを言ったのかというと、簡単に説明するならば以下の通り。
「アンタの親父をブッ殺しておいたから、俺たちに協力して三代将軍になってくれ」
正確には、松平伊豆守と春日局が、家光を廃嫡しようとしていた徳川秀忠を機先を制して毒殺し、柳生但馬がそれを嗅ぎつけて「実は自分も秀忠を殺すつもりだった」と明かして暗殺犯の仲間入り(?)をし、そこへやってきた徳川家光に事情を打ち明けて事後共犯に引きずり込もうとしたのです。
尚、松平伊豆守・春日局・柳生但馬にとって徳川秀忠は主君に当たるわけで、これを殺すのは「主殺し」という当時としては大罪を犯すことであり、家光が事情を打ち明けられて激怒するのは至極当然。又、家光にとって秀忠は父であるから、事後共犯とはいえ「父殺し」という、これまた当時としては大罪を犯すことになるのです。
ちなみに、「親に会えば親を殺し…」の元ネタは殺仏殺祖という禅の教えであり、当然のことながら禅の教えでは主殺し・親殺しを推奨してはいません。本来の教義とはかけ離れた使われ方をしているのです。
敬虔な信徒ならば、これを以て義憤を覚えるかもしれません。ありがたい教えをねじ曲げてこんな使い方をするとはケシカラン、と。その怒りは理解できますが、私の見方はちょっと違います。
この作品において柳生但馬は、そのケシカランことを臆面もなくやってのける俗悪な人物として描かれている、と見ることができるのです。悪党は悪党でも大悪党ですな。
実際、この大悪党はその後も暗殺などの汚い手を打ち続け、しまいには…おっと、後は映画をご覧あれ。
ともかくも、それらの「悪行」の果てに「衝撃のラスト」での錯乱っぷりです。業が深いのと、萬屋錦之介の名演技とが相まって、実にいい味を出しています。
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