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原田実『トンデモニセ天皇の世界』文芸社

 ニセ天皇(自称天皇)といえば真っ先に思い浮かぶのが熊沢天皇です。熊沢天皇については本書の中でも取り上げられているし(P59-68)、本書表紙のスーツ姿の男性も熊沢天皇です。
 尚、熊沢天皇の背後にいるのは後醍醐天皇であり、こちらは本物の天皇です。
 なぜここで後醍醐天皇を登場させたのかを愚考するに、熊沢天皇を始めとするニセ天皇の多くは南朝(あるいは後南朝)の末裔を称しており(例:池端天皇、三浦天皇、外村天皇)、その「南朝系子孫」の起源とされる南北朝の動乱の戦犯が後醍醐天皇だから、ではないでしょうか。

南北朝時代最大の戦犯は誰かと言われたら、それは後醍醐に背いた武家方の武士たちの誰かではなく、後醍醐その人をこそ示すべきだろう。(P111)

 とはいえ、後醍醐天皇がニセ天皇を生み出す原因というよりは寧ろ、ニセ天皇たちが自分のルーツを求めた際にそこに行き着きやすかったのでしょう。南朝は『太平記』の講談などで有名だったし、正統性がありそうに見えますからね。おまけにこの時代は戦乱で史料が不明だったりするから、なおさら付け込みやすい。

【参考文献】
原田実『トンデモニセ天皇の世界』文芸社

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