別宮暖朗『第一次世界大戦はなぜ始まったのか』文藝春秋
奥付によれば本書初版は2014年発行。第一次世界大戦勃発のちょうど100年後です。百周年に合わせて出版された模様。
ところで、タイトルの「第一次世界大戦はなぜ始まったのか」という設問に対して本書は、クリミア戦争や普仏戦争などの第一次世界大戦よりも半世紀ほど前から書き起こすことで当時のヨーロッパ情勢を長々と説明しています。これはつまり、それだけ通暁していないとわからないということなのでしょう。
…え? サラエボ事件? 確かにサラエボ事件は重要で、本書でも第三章を丸々それに当てているほどです。でも、サラエボ事件は契機であってドイツやフランスなどにとっては主原因ではありません。オーストリアの皇太子夫妻が暗殺されただけでは、ドイツがフランスに攻め込む理由を説明できませんからね。
尚、本書では、一般的に言われている三国同盟・三国協商が原因となったという説に対しては否定する立場を取り(P81)、最後の方で「死せるシュリーフェンが文明を崩壊させた」(P234)と、ドイツのシュリーフェン・プランのせいにしています。
愚考するに、プランは飽くまでプランであって、それを実行するかしないかは別の問題です。そのプランの実行にゴーサインを出した者の責任が問われます。
【参考文献】
別宮暖朗『第一次世界大戦はなぜ始まったのか』文藝春秋
【関連記事】
木村靖二『第一次世界大戦』筑摩書房
フォルカー・ベルクハーン『第一次世界大戦 1914-1918』東海大学出版部(1)
フォルカー・ベルクハーン『第一次世界大戦 1914-1918』東海大学出版部(2)
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