山田風太郎「伊賀の聴恋器」
あらすじ…服部大陣は自分が発明した聴恋器を使って、柳生宗矩の娘・お万をモノにしようとするが…。
上掲の人物関係図は物語の途中までのものであり、この物語では中盤以降も本筋に関わる重要人物が新登場するので注意されたし。上図を印刷しておいて、読み進めながら適宜書き足していくといいかもしれません。
それはさておき、本作の書き出しは以下のものであるところなどは、いかにも山田風太郎らしい。
服部大陣が、「聴恋器」という奇絶怪絶の道具を発明したのは、彼が柳生家の息女お万さまを一目見たとき、自分の睾丸に異様な振動を感じたことに発するのである。(P351)
いきなり下ネタをかましてくれています。やるなあ。
ところで、本作の舞台は戦国時代の遺風が今なお強く残る江戸時代初期。恋のライバルたちの内、服部大陣以外の3人はいずれも腕の立つ剣士。そして作者は山田風太郎。これで殺し合いにならないはずがない!
本来なら彼らの師でありお万の父でもある柳生宗矩が、殺し合いに発展しないよう目を光らせる「監督責任」があるのでしょう(彼にとっても有望な弟子を失うのは痛いはず)。でも、それで話が平和裏に八方うまく収まったら、読者が納得せんでしょうなあ。
【参考文献】
細谷正充編『時代小説傑作選 江戸の爆笑力』集英社
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