三島由紀夫「熊野(三)」
あらすじ…平宗盛は清水寺へ花見に行こうと思い立ち、熊野(ゆや)を連れて行こうとする。とそこへ、熊野の老母の手紙を持った朝顔が熊野のところへやってくる。老母は病気で余命いくばくもないという。
まず最初に、本作のタイトル「熊野」は「くまの」ではなくて「ゆや」と読みます。ご注意を。
それから、少々ややこしいのですが、古典作品の能楽に「熊野(ゆや)」があり、本作はこれを原典としているのですが、三島由紀夫は本作とは別に『近代能楽集』において同名のタイトル「熊野(ゆや)」を作っています。そこで、ここでは便宜的に、原典の方を「熊野(原)」、『近代能楽集』の方を「熊野(近)」、そして三田文学所収の本作を「熊野(三)」と表記することにします。
…え? 面倒臭い? 文句があるなら、こんなややこしいことをやらかした三島由紀夫にでも言って下さい。
さて、実を言うと私は「熊野(三)」は読んだのですが、「熊野(原)」も「熊野(近)」も未読です(ただしあらすじだけはWikiで読んだ)。従って三作品の相違について正確に述べることはできないのですが、「熊野(三)」のオリジナル部分はどうやら最後の湛心と清円の会話にあるようです。
会話の内容についてはネタバレ防止のために伏せておきますが、これを最後に挿入することで観音の利生譚という要素を大幅に薄めているようです。
【参考文献】
『三田文学 創刊一〇〇年名作選』三田文学会
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