戒厳令(1973年、日本)
監督:吉田喜重
出演:三國連太郎、松村康世、三宅康夫、菅野忠彦
備考:モノクロ、歴史劇
あらすじ…大正10年、朝日平吾は財閥の大物・安田善次郎を暗殺し、自らも命を絶つ。そして平吾の遺言により、血染めの衣が北一輝に贈られる。
人物関係図の中で無名の兵士を「兵士A」と表記したのは、DVDのチャプターに「兵士A」と書いてあったから。又、憲兵隊の岩佐とその上司は書き漏らしてしまいました。
さて、本作は何の予備知識もなしに一回観ただけでは何が何やらわからない作品です。前衛劇の趣もあってそれはそれで難解なのですが、のみならず北一輝の思想をある程度は知っている必要は感じました。
そんなわけで私は補助教材として渡辺京二著『北一輝』(ちくま学芸文庫版)を読むことにしたのですが、もっと平易で簡単な解説本の方がよかったと少々後悔しないでもない。ともあれ、補助教材のレビューは読了後に改めて取り組むことにします。
ただ、本書を読んで映画の理解が多少は深まったことは述べておきます。
例えば映画で北一輝邸の一室に明治天皇の御真影が掲げられていますが、これにもちゃんと理由があります。
明治帝の場合、北は彼を革命のシムボルとみなしていたようだ。カリスマの資格として彼は、「天を畏れ民を安んずるの心」をあげた。明治帝はそのような心を失わぬ皇帝、つまり自分が国家にとっての「必要」であるのを一瞬でも忘れぬ皇帝だと、彼は考えるのである。(『北一輝』P284)
史実としての明治天皇がどうであったかはここでは書かない。ここで重要なのは、北一輝が明治天皇に何を投影していたのかということです。本書の論述に従うなら、それは「革命のシムボル」としての「皇帝」ということになります。
要するに北一輝はあの御真影を掲げることによって革命をやるぞと言ってるわけですな。無論それは彼なりの理論に基いていて、そして彼なりの方法で、ということになります。
ところで、この映画を一回目に観た時は三國連太郎(北一輝)の怪演に圧倒されました。うわぁ、こいつ完全にイッちゃってるよ…という具合に。
そして二回目に観た時は、兵士Aの存在感が大きくなっていました。小心翼々とし怯える兵士Aは、あの時代の「普通の人」を代表しているのではないか。というより、他の人たちが普通じゃなさすぎる…。
尚、映画「日本暗殺秘録」で描かれた安田善次郎暗殺事件と二・二六事件が、本作では北一輝という人物を通してつながっています。そこで関連記事として「日本暗殺秘録」を挙げておきます。
【関連記事】
・日本暗殺秘録
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