松本利秋『戦争民営化――10兆円ビジネスの全貌』祥伝社
ここで挙げられている10兆円の根拠は以下の通り。
ニューヨーク・タイムズなどの取材によれば、軍事請負会社の市場規模は全世界でおよそ1000億ドル(約10兆円・二〇〇四年換算、以下同)にのぼるという。(P208-209)
そして最後に、本書はこうしめくくっています。
このように日本企業も含めて、巨額でかつ長期にわたるであろうイラク復興事業を、世界の企業が不況脱出のためのビジネスチャンスと見なし、事業に参加しようとしてしのぎを削る状況が、今後も続くことは間違いないだろう。(P251)
あの頃(本書は2005年8月10日初版発行)はイラクが安定するものと思われていたんでしたっけ(※1)。ところがどっこい、今はダーイシュ(ISIS)がいて復興どころじゃない。しかもダーイシュの勢力はシリアなどイラク国外にも広がっており、フセイン政権よりも厄介です。
そうですねえ、今の状況から考えると、上記の引用文のパロディとしてこんなことを書いておきましょうかね。
このようにブラック・ウォーターも含めて、巨額でかつ長期にわたるであろうダーイシュとの戦争を、世界のPMC(※2)がビジネスチャンスと見なし、戦争事業に参加しようとしてしのぎを削る状況が、今後も続くことは間違いないだろう。
問題は、誰がその巨額かつ長期にわたる費用を負担するのかということですが、原因を作ったアメリカは無論のこと、中東諸国にも「応分の負担」をしてもらいましょうか。何しろ、ダーイシュの「革命」が自分たちのところへ波及したら、自分の身が危うくなりますからね(シリアのアサド政権を見よ!)。
※1.悲観的な見方も多かったが、少なくともアメリカ政府のプロパガンダは楽観的だったと記憶している。
※2.軍事請負会社あるいは民間軍事会社とも訳される。ブラック・ウォーターは有名なPMC。
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