キャロル・エムシュウィラー「私はあなたと暮らしているけれど、あなたはそれを知らない」
あらすじ…「私」はノーラという女性の家に勝手に住み着きノーラにその存在を知られないように暮らす。
編者(米澤穂信)による巻末の「無限なんていらない――解説にかえて」では、本作について、
「愛を描いた小説だ」とか、「これは歴史小説だ」とか、自分の中でわかりやすく片付けるためのラベリングが通じない。(P392)
と述べています。これは無理からぬことで、そもそも主人公の「私」の正体が不明であるし、「私」が何を目的としているのか今一つわからないからです。
ただ、もしも私がラベリングするとしたら、これは妖怪小説です。だってこの主人公、妖怪の一種であり、ノーラに憑いたのだと言えますからね。
さて、「私」が妖怪であると判断したからには、私は彼女に名前を付けてやりましょうかね。最初に思い付いたのは「影女(かげおんな)」ですが、この名前は既に存在しているような気がするので、もう一ひねり入れて「影棲女(かげすみおんな)」…いや、それではこの妖怪がノーラの影に潜んでいるような印象を与えてしまいかねない。そうだ、影を陰に変えて「陰棲女(かげすみおんな)」と名付けておきます。
【参考文献】
米澤穂信『世界堂書店』文藝春秋
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