雪之丞変化(1963年、日本)
監督:市川崑
出演:長谷川一夫、山本富士子、若尾文子、市川雷蔵、勝新太郎
原作:三上於菟吉『雪之丞変化』
備考:時代劇
あらすじ…上方で評判の女形・中村雪之丞が江戸へやってくる。彼は元長崎奉行・土部三斎とその一味を仇と狙っていた。
まず最初に、この映画に登場する差別用語について。今日の観点からすれば不適切とされる言葉が出てきます。その言葉とは「河原者(かわらもの)」です。
【河原者】(1)中世、河原に住み、卑賤視された雑役や下級遊芸などに従った者。河原は当時穢(けがれ)を捨てる場所と考えられていた。かわらのもの。(2)江戸時代、歌舞伎役者の賤称。(広辞苑)
この映画では(2)の意味で使われており、殊に雪之丞を指します。
歌舞伎役者といえば今でこそ人間国宝を輩出するなど地位も高いものの、江戸時代は賤民として蔑まれていました。その社会的差別を考慮に入れるならば、雪之丞は被差別民に身を落としてでも復讐を遂げようとする、という執念を感じ取ることができるのです。
ところで、この映画の特色の一つとして、舞台演劇を意識した演出があります。遠くからの撮影はまるで一個の舞台を見ているようだし、出演者がやたらと説明口調になったりするのも舞台演劇ではよくあることです。
作風は異なりますが、フェデリコ・フェリーニの「サテリコン」を思い出しました。
最後に一つ。「雪之丞変化」は何度も映画化されているのみならず、ドラマ化や舞台化もされていますが、私が視聴したのはこの1963年版の映画だけです。ですので、他の同名作品との比較はここでは致しません。もしも比較レビューをご希望の場合は、時代劇マニアのところへでも行って、どうぞ。
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