アガサ・クリスティー『ハロウィーン・パーティ』早川書房(2)
アリアドニ・オリヴァのアリアドニはギリシア神話のアリアドネから、エルキュール・ポアロのエルキュールは同じくギリシア神話のヘラクレスから来ていることは有名(?)ですが、本作では登場人物の名前の由来について話し合うくだりが第十一章の後半に出てきます。
ちょっとわかりにくかったので少々調べてみました。
・ミランダ(P163)
シェイクスピアの劇『テンペスト(あらし)』の主人公プロスペローの娘。
・ジュディスとホロファーニズ(P172)
アポクリファ(旧約聖書外典、旧約聖書続編)の『ユディト記』のユディトとホロフェルネスのこと。
・ジェールかシセラ(P173)
『旧約聖書』「士師記」第四章の登場人物。カナンの王ヤビンの将軍シセラと、カイン人ヘベルの妻ヤエルのこと。
シセラは彼女に、「天幕の入り口に立っているように。人が来て、ここに誰かいるかと尋ねれば、だれもいないと答えてほしい」と言った。だが、ヘベルの妻ヤエルは天幕の釘を取り、槌を手にして彼のそばに忍び寄り、こめかみに釘を打ち込んだ。釘は地まで突き刺さった。疲れきって熟睡していた彼は、こうして死んだ。(「士師記」第四章第二十節~第二十一節)
ヤエルとシセラのエピソードはあまりにマイナーであるため、ここに当該箇所を引用しました。
尚、ユディトとホロフェルネスの話の関連でヤエルとシセラが出てきましたが、両者の話の共通点として、「男が眠っている隙に女がその男を殺した」ということが挙げられます。
ヤエルとシセラの話を持ち出したのはアリアドニですが、彼女の頭の中ではこの古代の二つの「殺人事件」が似たようなものとして閃いたのでしょう。
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