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フォルカー・ベルクハーン『第一次世界大戦 1914-1918』東海大学出版部(3)

 戦争が勃発すると何が起こるのか? 第一次世界大戦ではインフレ、増税、国債の増発が起きたことを本書は述べています。

 この戦争は、財政・租税の専門家にもとりわけ難しい問題を投げかけた。まず初めに、物価高騰の問題が出てきた。経済上の、そして財政上の戦争への準備がどの国においてもほとんどなされていなかったので、国家による需要は戦争の始まりと共に急速に上昇していった。たとえ諸官庁が工業家、農民、商人による価格の釣り上げの阻止に向けて一生懸命に動いたにしても、インフレーションを食い止めることなど出来なかった。その間に食料や消費財は、軍の需要と戦時物資への生産の転換によって既に段々と品薄になってきていた。一般民衆の需要は、したがって物価を引き上げていくことになっていった。先に言及した大衆の窮乏化が始まったのである。大衆は、物価の高騰の中でしだいに生活に窮するようになっていった。
 そして最後には、最も重大な問題が現れてきた。如何にして国家は、国民経済学的にはほとんど生産的ではない武器の購入費用を支払うのであろうか。基本的には三つの可能性が存在した。その三つの可能性に全ての交戦国は、重点の置き方はさまざまだが手を伸ばした。一つは税の引き上げであり、市民にその負担を迅速に課していくものである。二つめは国債である。それは国家負債を肥大化させ、次の世代にその支払いを転嫁していくものである。三つめは、金準備の取り崩しである。
(P49-50)

 財務官僚にとっては悪夢のような事態ですが、庶民にとっては地獄のような生活苦があることをお忘れなく。
 それから念のために言っておきますが、この程度のことはまだまだ序の口ですからね。戦争が終わらずに人が大量に死傷し、物資が更に窮乏し続けると、もっとひどいことになります。
 具体的に何が起きたかについてのこれ以上の描写は本書に譲りますが、最終的にはロシア帝国のように国が崩壊します(ロシア革命)。

 あ、でも、悪いことばかりじゃありませんよ。前線から帰還してきた兵士たちは政治的・社会的意識が高くなります(P58)。又、銃後での女性労働の増大によって女性の権利意識も高まっています(P79)。
 尚、彼らを「意識高い系w」と嘲ってはいけません。なぜなら、彼らは意識を高めるのに充分な(あるいはそれ以上の)働きをしたのだし、犠牲も払っているのですから。

【目次】
フォルカー・ベルクハーン『第一次世界大戦 1914-1918』東海大学出版部(1)
フォルカー・ベルクハーン『第一次世界大戦 1914-1918』東海大学出版部(2)
フォルカー・ベルクハーン『第一次世界大戦 1914-1918』東海大学出版部(3)
フォルカー・ベルクハーン『第一次世界大戦 1914-1918』東海大学出版部(4)

【参考文献】
フォルカー・ベルクハーン『第一次世界大戦 1914-1918』東海大学出版部

【関連記事】
木村靖二『第一次世界大戦』筑摩書房
別宮暖朗『第一次世界大戦はなぜ始まったのか』文藝春秋

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