日本暗殺秘録(1969年、日本)
監督:中島貞夫
出演:千葉真一、田宮二郎、藤純子、若山富三郎、高倉健、鶴田浩二、片岡千恵蔵、菅原文太
原作:鈴木正『暗殺秘録』
備考:アクション
桜田門外の変を始めとする日本の9つの暗殺事件をオムニバス風にした映画。ただ、その中でも千葉真一演じる小沼正のパート(血盟団事件)が大部分を占めており、これだけで映画一本分は行けそうな量となっています。
とはいえ、スカーフェイスの菅原文太(安田善次郎暗殺事件)や、青年将校の高倉健(相沢三郎事件)もなかなか捨てがたい魅力を放っています。
さて、この映画の予告篇で「暗殺は是か非か」とあったので、それについて少々考えてみることにします。
言うまでもないことですが、法律的には暗殺は非です。実際、ここで描かれた暗殺者たちの多くは捕えられ裁きにかけられています。二・二六事件のパートに至っては、ご丁寧にも処刑のシーンまで出てきますからね。
映画の中で井上日召が小沼正に、捕まった際の対応をレクチャーするくだりが出てきますが、彼らだってそうなることぐらいわかっていたわけです。それでも敢えて暗殺に走った彼らに対して、後世の人間が賢(さか)しらに法律を云々しても無意味でしょう。
そうですねえ、私だったら彼らにこう言ってみましょうかね。
「なるほど、あなた方は崇高な理念を掲げておいでのようだ。では、暗殺によってその理念は実現しましたか?」
例えば桜田門外の変で大老が暗殺されても幕府の開国政策は維持されたし、朝日平吾が安田善次郎を殺しても貧民は救済されない。星亨を殺しても腐敗した政治家は他にも大勢いる…。
かつて私は「覇王伝アッティラ」という映画のレビューの中で暗殺の有用性について述べました。しかしここで注意していただきたいのは、「神の災い」とも呼ばれたアッティラ大王ならば暗殺の効果は大きいのであって、大臣クラスの人間ならば殺しても替わりが次々に出てくるということです。まさか全員ブッ殺せとでも?
最後に、イギリス映画「大統領暗殺」についても言及しておきます。「大統領暗殺」はブッシュ大統領(当時)が暗殺されたという架空の設定で描かれたモキュメンタリーですが、この作品内ではブッシュ暗殺後にチェイニー副大統領が大統領に昇格しました。当然のことながらブッシュ政権の政策も継承されています。
アメリカ大統領を暗殺しても、このザマです。
【関連記事】
・覇王伝アッティラ
・大統領暗殺
贈右大臣大久保公哀悼碑(日記)
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