ガルシン「あかい花」
あらすじ…狂気の青年が癲狂院に送られる。ある時、青年は癲狂院の庭で真紅の花を見つける。
癲狂院とは今でいう精神病院のことであり、タイトルの「あかい花」とは罌粟(けし)の花のことです。
魯迅の「狂人日記」はカニバリズムの妄想にさいなまれていましたが、こちらの「あかい花」の狂人は「悪との戦い」に身を投じています。「あの燃えるようなあかい花に、世界のありとある悪が集まっていたのだ」(P24-25)と思い込んで戦うのですが、しかし所詮は「幻想の生んだ、現実にはない戦い」(P25)です。
それにしても、一人の狂った青年に「悪との戦い」なんて荷が重すぎる。もしも、「神、それを命じ給う」というのならば、そんな奴に命じた神の判断こそ狂っています。命じるなら大天使ミカエルにでも、どうぞ。
【参考文献】
ガルシン『あかい花 他四篇』岩波書店
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