松本清張「逃亡者」
作者が松本清張でタイトルが「逃亡者」と来ると、時刻表を駆使したクライムサスペンスか推理小説じゃないかと思うかもしれませんが、あにはからんや、時代小説です。
さて、それではこの中でだれが逃亡者なのかというと、細川忠興のもとから逃げ出した稲富直家のことです。又、最後にこんな一文があります。
技術という特殊な立場に立った直家は、その技術のなかに逃亡して果てたといえる。(P234)
ちょっと補足しておくと、ここでいう技術とは砲術のことで、直家は鉄砲の名手(稲富流砲術の祖)です。
ちなみに、上記の登場人物の中で逃亡した者は彼以外にもいます。
以後の藤孝は隠居して、戦争は子の忠興に殆ど任せきりであった。(中略)ここに藤孝の忠興からの逃鼠があった。(P224)
彼(引用者註:細川忠興)は於玉の死ではじめて己れがこの女房から逃亡するのを得たのを悟った。しかし、於玉もまたその生涯、性格の合わぬ夫から逃避しつづけていたのであった。(P231)
だとすると、「逃亡者」は合計で4名になりますな。
【補足】
とう・ざん【逃鼠】にげかくれること。(広辞苑)
【参考文献】
松本清張『軍師の境遇』角川書店
« バッド・アス(2012年、アメリカ) | トップページ | カミュ「唖者」 »
「書評(小説)」カテゴリの記事
- 樋口一葉「この子」(2023.05.16)
- 樋口一葉「わかれ道」(2023.05.15)
- 樋口一葉「うつせみ」(2023.05.14)
- 樋口一葉「ゆく雲」(2023.05.13)
- 樋口一葉「大つごもり」(2023.05.12)
コメント