泉竹史『双鳥の尸解 志賀姫物語』郁朋社
あらすじ…平安時代初期。泊瀬の滝蔵寺で智泉という青年僧が変死しているのが発見された。友人の泰範が駆けつけ、調べてみることにする。
タイトルの「尸解」という語を見て、道教の経典『抱朴子』に尸解仙の記述があったことを思い出しました。そこで『抱朴子』を調べてみると、以下の文章を発見。
仙道の経典によれば、
『最上の道士は肉体のまま虚空に昇る。これを天仙という。
中位の道士は名山に遊ぶ。これを地仙という。
下位の道士は一旦死ぬが、後で見ると蝉のように藻抜けの殻。これを尸解仙という』
とある。
(『抱朴子・列仙伝・神仙伝・山海経』平凡社 P14, 抱朴子 内篇 巻二 論仙)
孫引きになりましたが、「仙道の経典」が具体的にどれを指すのかわからないし、よしんばわかったとしても私の手には負えないでしょう。
尚、尸解仙についてもう少し詳しい解説はないかと探してみると、『神仙伝』の註に以下の文章を発見。
屍解 屍体を残して魂が昇天すること。もしくは屍体もろとも棺中より消えて仙人なること。『雲笈七籤』八四に各種の屍解法が説かれている。
(『抱朴子・列仙伝・神仙伝・山海経』平凡社 P361, 神仙伝 王遠)
こちらは尸解ではなく屍解となっていますが、どちらも同じものと思われます。
そういえば『双鳥の尸解』の巻末の「おもな参考文献」(P245)に『抱朴子』がありましたっけ。
【参考文献】
泉竹史『双鳥の尸解 志賀姫物語』郁朋社
『抱朴子・列仙伝・神仙伝・山海経』平凡社
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