薔薇の名前(1986年、仏・伊・西独)
監督:ジャン=ジャック・アノー
出演:ショーン・コネリー、クリスチャン・スレイター、F・マーリー・エイブラハム、ロン・パールマン、フェオドール・シャリアピンJr.、ヴァレンティナ・ヴァルガス
原題:The Name of the Rose (Le Nom de la Rose)
原作:ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』
備考:ゴシック・ミステリー
あらすじ…1327年、北イタリアの修道院に、神学論争に参加するために修道士ウィリアム・オブ・バスカヴィルが若い修道士アドソ・オブ・メルクを連れてやってくる。修道院長はウィリアムに、若い修道士が不可解な死を遂げたと告げ、事件の解明を依頼する。
原作の小説はベストセラーになったし、この映画自体もヒットしたので、犯行のトリックや犯人を知っている方も多いかもしれません。かく言う私も、犯行のトリックについては大学時代に聞いたことがありましたし、つい最近もポール・アルテの短篇小説「コニャック殺人事件」にて言及されているのを読んだばかりです。トリックがわかれば、犯人もおおよそ見当が付くな…と思って観ていたら、真犯人の予想が当たりました。
尚、この映画をまだ観ていない、もしくは原作を読んでいない、という人のために、トリックと真犯人は伏せておきます。ただ一つ言わせてもらえば、作品中にちりばめられた布石を注意深く観察していればそれほど難しくはないものと思われます。
それから、DVD化に際して監督のコメンタリーが付けられているのですが、DVDで視聴する人は本編を観終わった後に一度はこれを聴いておくことをおすすめします。
撮影の裏話を披露してくれるのみならず、作品の歴史的・宗教的背景について解説もしているので、ちょっとした教養番組の代わりになります。
例えば、物語の後半に出てくる、「キリストが身に着けていた衣服はキリストのものか?」という神学論争は、現代人の目から見れば馬鹿馬鹿しいものに映るし、私も最初に見た時はそう思いました。しかし監督によるとこれはメタファー(暗喩)で、実は教会の財産所有の問題を論じているのであり、現代の資本主義と社会主義の論争にも通じる問題だそうです(うろ覚え)。
そう考えると、「何をバカなことを」と言い切ることはできなくなります。う~ん、考えさせるなあ。
【おまけ】
・中世ヨーロッパの修道院を舞台にした映画→「マンク ~破戒僧~」
・キリスト教の異端を取り扱った映画→「銀河」
・異端審問が登場する映画→「宮廷画家ゴヤは見た」
・僧侶が探偵となって活躍するミステリ小説
→『ブラウン神父物語』(G・K・チェスタートン)
→『毒杯の囀り』(ポール・ドハティー)
→『赤き死の訪れ』(ポール・ドハティー)
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