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有永弘人訳『ロランの歌』岩波書店(2)

あらすじ…和議が整ったのでフランス軍は母国へ帰還することに。その際、殿軍を誰が務めるかという段になって、ガヌロンはロランを推す。それを聞いたロランは怒り出すが、結局はロランが殿軍を務めることになった。

ロラン、殿軍に付くべきことを聞くや、
怒りをこめて、義父に語れり、
「うぬ! この破落戸め、生まれ汚らわしき悪党め!(後略)」
(P51)

 なぜロランがここまで怒り出したのかと考えると、この時点ではまだガヌロンの奸計(マルシルが裏切ること)は知らなかったから、そのことではありますまい。
 シャルルがガヌロンに対して「身内に不倶戴天の怨み宿れり」(P50)と指摘していることから、ロランがガヌロンを危険な使者の任務に推挙したことに対する意趣返しとして、ガヌロンが自分を殿軍というこれまた危険な任務に推挙したのだとロランは思ったのでしょう。
 ちなみに引用文の前節ではロランが騎士の道をわきまえた対応を取っており(※)、矛盾しているように見えます。後注によると「ガストン・パリスは異った二つの源泉からの流出と見」(P263)るとのこと。これが妥当な見解ですかな。

 さて、ロランは怒っていましたが、ロランが殿軍を務めること自体は妥当であったと思います。理由は二つ。
 そもそも殿軍は撤退しつつ戦うという困難な任務を果たさねばならないことから、軍事的能力に優れた者でなければ務まらないとされています。
 それではロランはそれにふさわしい人物かというと、答えはイエス。というのは、彼自身が語ったところでは、彼には以下の功績があります。

われらスペインに来りて、ここに満七年、
われ、君がためノープルとコンミープルを征したり。
さらにヴァルテルヌとピーヌの地、
またバラグエとテュエルとセジルを取りたり。
(P16-17)

 ロランはスペイン遠征でこれほどの軍功を立てたのだから、軍事的能力に優れていると見なしてよいのです。

 そしてもう一つの理由は、和平の条件にあります。和平の条件には「後日マルシルがフランスへ赴き、キリスト教に改宗する」というものと、「スペインの半分をロランに与える」というものがあります(P33-34)。ここで注目すべきは後の方です。
 領地を持つということはその地を防衛する義務を負うということであり、ロランがスペインの半分を領有するとなれば彼はその地を守らねばなりません。又、シャルルは、スペインが叛いた場合、あるいは南からムーアが攻めてきた場合に備えてロランを配しておこうという意図があったのかもしれません。
 だとすれば、ロランが殿軍に残ってスペインを見張るのは間違った役割ではありますまい。

※長くなるので引用は差し控えるが、この部分をよく読むとロランが皮肉を言っているのだと取れなくもない。

【参考文献】
有永弘人訳『ロランの歌』岩波書店

『ロランの歌』目次

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