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久生十蘭「カイゼルの白書」

あらすじ…1939年9月、ウィルヘルム二世はアドルフ・ヒトラーに白書という名の独白を送り付ける。

 自分がエビになった夢を見たという話に始まって、リューマチで脚が痛むとか、霖雨(ミストレジェン)がどうだとか、(他人にとっては)どうでもいい話が延々と続きます。
 又、昔の恋人ミンゲッティ伯爵夫人と会った後、こんなことを述べています。

 余は、ふと、アンリ・ド・レニエの詩の一句を思い出した。
   蝋燭の焔は消えし青きりぼんぞ立ちのぼる……
 余には、今日のこの日のためにレニエがこの詩を作っておいてくれたように思えてならなかった。余も仲々詩人だね。
(P226)

 余も仲々詩人だねって、お前が作った詩じゃないだろ!と、思わず突っ込んでしまいました。
 このように、ウィルヘルム二世はとにかくウザい人物として描写されています。ここまでウザいと、もはやギャグの領域です。

【補足】
 ドイツ皇帝ウィルヘルム二世は第一次世界大戦の敗北により退位し、オランダへ亡命。1941年死去。
 尚、1939年9月1日にドイツ軍がポーランドに侵攻し、これが第二次世界大戦の始まりとされています。
 つまり、この作品は、第二次世界大戦の初期に、亡命生活を送る晩年のウィルヘルム2世がドイツの最高権力者に送った親書ということになります。それにしては内容がひどいですが…。

【参考文献】
久生十蘭『十蘭ラスト傑作選』河出書房新社

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