ジョン・ディクスン・カー『皇帝の嗅ぎ煙草入れ』嶋中書店
あらすじ…向かいの家を眺めたイヴは、その一室で婚約者の父ローズ卿が殺されたことに気付く。犯人の茶色の手袋。こなごなに砕けた嗅ぎ煙草入れ……。(裏表紙の紹介文より引用)
推理小説の古典的作品。江戸川乱歩が度々言及していたな…と思い出して本書を手に取ってみました。
さて、本作は「心理的トリック」が特徴なのですが、具体的内容を言ってしまうと誰が犯人かわかってしまうので、うまく述べることができません。ただ、一つだけ言わせてもらえば、心理的トリックは後世の推理小説でも使われているので、そういう諸作品を読んでいる現代の読者諸氏には目新しいものとは映らないでしょう。
最後に、警察署長ゴロン氏が漏らした「打ちあげ花火」(P356)という言葉について。この言葉は、「ゴロン氏が目撃した二人の人物とは誰か?」のヒントとなって読者に提示されているようです。
そこで本作の中で他に「打ちあげ花火」の語が使われている箇所を探してみると…ありました。
「ねえ、博士、わたしは探偵じゃない。もってのほかだ。しかし、打ちあげ花火となれば、話は別だよ。花火なら、三キロの距離からでも、まっくらな闇のなかでもわかるよ」(P171-172)
これは、ゴロン氏がダーモット・キンロス博士に言ったセリフです。そして、前後の会話から誰について語っているのかを考えると…おっと、その先は本作をお読み下さい。
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