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浄瑠璃「牛王の姫」

あらすじ…牛王の姫の家にやってきた牛若丸は病床に伏す。一方その頃、平清盛は牛若丸が鞍馬にいないことを知って厳しく探索させる。牛王の姫の叔母・尼公は欲心に駆られて六波羅へ訴え出る。

 当時は「平家にあらずんば人にあらず」と言われるほど平家の絶頂期。かたや牛若丸は源氏の御曹司ではあるものの無名といってよい存在でした。ですから、滅亡した敵の子供が一人いなくなったところで、平家がそこまで血眼になって探すとは思えないのですが、とりあえずこの話では牛若丸は要注意人物と目されていたということにしておきましょう。
 要注意人物だったならば、鞍馬山に平家の息のかかった者、即ち監視役がいて、牛若丸が行方不明になったとわかると直ちに六波羅(平清盛がいるところ)へ急報したのでしょう。そう考えないと、平家方の素早い対応(隣国の河内や丹波などにまで探索の手を伸ばしている!)が説明できないからです。

 しかしながら、なぜか捜査となると途端にうまく行きません。牛王の姫を拷問して牛若丸の居場所を自白させようとするのですが、彼女を拷問するだけで他の手段をすっかり忘れているようです。
 ちょっと待て。尋問するならば「十二人の女房達」(P420)や、屋敷に勤務している下人・婢女の類もいるはずですが、彼らは全く無視されています。「家政婦は見た」ではありませんが、こういう人たちは主人の動静を結構知っていたりしますぞ。
 それから、ちょっと推理力があるならば、「牛王の姫が困った時に助けを求める人物は誰か?」と考えて、醍醐にいる叔父の「しやうしん聖」を探り当てるのはそう難しいことではないでしょう。六波羅に留まっている尼公に訊ねればわかることだからです。
 探索の指揮を執った景清の捜査能力が低かった、ということにしておきましょうか。

【参考文献】
信多純一・坂口弘之校注『古浄瑠璃 説経集 新日本古典文学大系90』岩波書店

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