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近松門左衛門『世継曾我』

あらすじ…曾我兄弟は源頼朝が富士の裾野で行なった巻狩りの前夜に父の仇・工藤祐経を討ち果たすが、曾我十郎は戦死、曾我五郎は捕えられ処刑される。狩猟の成果を報告する段になって、五郎を捕えた五郎丸(荒井藤太)が曾我五郎を獲物として記録係の新開荒四郎に報告する。それを朝比奈三郎がイチャモンを付け、曾我兄弟の郎党・鬼王&団三郎に新開と荒井を殺すよう唆(そそのか)す。

【主要登場人物一覧】
曾我五郎時致………曾我兄弟の弟の方。
鬼王(おにおう)………曾我兄弟の郎党。
団三郎………………曾我兄弟の郎党。鬼王の弟。
少将…………………化粧坂の遊女。曾我五郎の馴染み。
虎……………………大磯の遊女。曾我十郎の馴染み。
祐若…………………曾我十郎が虎御前との間にもうけた隠し子。
源頼朝………………鎌倉幕府将軍。
五郎丸………………源頼朝の召使いの童。怪力の持ち主で曾我五郎を捕える。元服して荒井藤太重宗と名乗る。
新開荒四郎…………土肥次郎実年の子。
朝比奈三郎義秀……豪勇の士。
二の宮の姉…………曾我兄弟の姉。
母……………………曾我兄弟の母。

 曾我兄弟の仇討ちの後日譚。
 本作品のタイトル「世継曾我」は十郎の隠し子・祐若が曾我家のお世継ぎとして源頼朝に公認されるところから来ています。

 さて、この作品の敵役は荒井藤太と新開荒四郎なのですが、この二人はヘタレキャラと言っても差し支えないくらい情けないんです。彼らのエピソードをかいつまんで紹介します。

・朝比奈三郎の脅し文句にビビって夜も寝られない。(P18)
・鬼王にビビって逃げ出す。(P20)
・団三郎にビビって逃げ出す。(P33)
・虎&少将にだまされて唐櫃に閉じ込められる。(P36-40)

 荒井藤太は怪力の持ち主なのですが、それを活かすどころかかえってそれが死因にすらなっています。こいつは曾我五郎を捕えた時が人生の絶頂期だったわけですな。
 一方、新開荒四郎に至っては朝比奈三郎に命乞いする(P40)など小物感丸出しです。全くいいところがない。
 もうちょっと強い敵キャラにしてもよかったんじゃないかとも思いましたが、郎党二人が付け狙うにはこのくらいでいいのかもしれませんな。

【参考文献】
松崎仁・原道夫・井口洋・大崎正叔『近松浄瑠璃集 上 新日本古典文学大系91』岩波書店

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曽我兄弟の墓(箱根)

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