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近松門左衛門『女殺油地獄』

あらすじ…油を商う河内屋の道楽息子・与兵衛は、放蕩と数々の悪行により勘当される。そしてある夜、同業のてしま屋の女房・お吉に借金を申し込むも断られ逆上、お吉を殺して店の金を奪い逃走する。

 本作は上之巻・中之巻・下之巻の三部構成になっており、中之巻の最後で与兵衛は勘当され、下之巻でクライムサスペンスになります。もちろん上之巻・中之巻を読んでおくに越したことはないのですが、下之巻だけを読んでもスリリングさを味わうことができます。

 さて、ここからさきは少々のネタバレになるのでご注意を。
 お吉が殺されてから「三十五日の逮夜」(P216)の段階で、てしま屋に来ていた帳紙屋五郎九郎が「殺し手も其内知れませう」(P217)と言っていることから、彼らは誰が犯人なのか知らなかったようです。しかし同夜に与兵衛が逃げようとするのを、店の前で奉行所の役人が捕えているので、捜査当局は与兵衛が犯人だと目星を付けて張り込んでいたものと思われます。
 これは私の推測ですが、証拠品となる「血に染まつたる書出し一通」(P218)がなくても、捜査線上に与兵衛が浮かび上がるのはそれほど難しいことではないでしょう。
 犯行現場には犯人が持ってきた樽が残されている(らしい)ことから、犯人は夜でもその店から油を購入することのできる人物、即ち顔見知りの可能性が高い。それでは、顔見知りの中で怪しい人物はといえば…色々と悪いことをやらかしている与兵衛ですな。
 しかもこの与兵衛は勘当されている身で素寒貧のはずなのに女郎遊びを続けているし、更には犯行のあった五月四日の夜に方々の借金を返済しています(P216)。これはもう怪しすぎるのを通り越して自ら犯行を認めているようなものです。

【参考文献】
松崎仁・原道夫・井口洋・大崎正叔『近松浄瑠璃集 下 新日本古典文学大系92』岩波書店

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