江戸歌舞伎「御摂勧進帳(ごひいきかんじんちょう)」
あらすじ…源義経が都落ちして行方をくらませた。義経の正妻・岩手姫に横恋慕していた是明親王は、稲毛の入道を使って岩手姫を拘引しようとするが、坂東太郎らの活躍により妨害される。
是明親王は「後鳥羽院の弟の宮」(P21)という設定。あれ、この時点で後鳥羽(史実では在位中なので天皇)はまだ子供のはずだから、その弟もまだほんの子供のはずなのに横恋慕とは妙ですな。
そこでちょっと調べてみました。まず、正確な年代は「時 文治元年(一一八五)冬」(P81)とあります。それから、インターネットで天皇家の系図をチェックしてみると、字こそ違えど惟明親王(1179~1221)が見つかりました。
是明親王イコール惟明親王ならば、彼は御齢6歳で横恋慕ですか。マセてるってレベルじゃねーぞ!
それから、物語の後半にて登場する、(義経と岩手姫の)偽首の算段について。ネタバレ防止のために詳細は伏せますが、偽首を拵えて鎌倉からの追及をかわして義経らを逃がそうと藤原秀衡などが画策します。
でも、ちょっと待てよ。首実検すればそんな嘘、一発でバレるはずです。無名の人間ならごまかしがきくかもしれませんが、源義経はこの時点では超有名人。しかも鎌倉には彼を見知っている者が大勢いますぜ。
【参考文献】
古井戸秀夫・鳥越文蔵・和田修校注『江戸歌舞伎集 新日本古典文学大系96』岩波書店
【関連記事】
尾崎秀樹『にっぽん裏返史』文藝春秋(4)義経の首
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