チェーホフ「中二階のある家」
あらすじ…田舎で無為の生活を送っていた風景画家は、ふとしたことから中二階のある家・ヴォルチャニーノワ家の人たちと出会い、交流を重ねる。
ヴォルチャニーノワ家は母親のエカチェリーナ・パーヴロブナ、その娘リジア(姉)とジェーニャ(妹)の3人暮らし。リジアは小学校の教師で積極的に社会活動をしており、第3話では主人公と議論しています。
このあたりの討論はマルクシズムにかぶれた学生にとっては思索の材料になるかもしれませんが、その方面からのアプローチなら山のようにあるはずだと思うので、ここでは素っ飛ばします。
今回ここで取り上げるのは、第4話で描かれる、主人公のジェーニャに対する恋および失恋です。
この恋はリジアの反対によって終わりを告げるのですが、これについてはリジアの方を弁護せざるをえませんな。そもそも反対の理由を考えるに、第3話で描写された意見の相違のみならず、主人公の生活能力の無さも理由の一つになっていたんじゃないでしょうか。
何しろ彼はそこでは働いていませんからね(これは推測ですが、彼はスランプに陥っていて田舎に逼塞していたのかもしれません。しかしもしそうだとしても、リジアはそれに深い理解を示してくれるだろうか?)。せいぜい働きらしいものといえばスケッチをする(P17)くらいですが、それだって金になるとは限らない。
小学校の教師というカタギのリジアにしてみれば、大事な妹をそんな男の嫁にやるなんてもってのほか、と考えてもおかしくはありますまい。
【参考文献】
チェーホフ『かわいい女・犬を連れた奥さん』新潮社
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